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道ありき<青春編> 三浦綾子 新潮文庫

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黄金週間に入ってからずっと三浦綾子の感想が続いているので、読んでくださっている方はウンザリかも知れないけれど、この黄金週間は三浦綾子週間にしようと思っている。

若い頃あんなに読み耽ったのに、HPにはほとんど感想を書けていない。

最近になって立て続けに三浦綾子についてメールを戴いた事もあり「書かねば!」言う気持ちになったのだ。

HPを引越ししたのも理由の1つ。せっかく新しくなったのだから、内容も少し充実させたいな……と。

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道ありき<青春編>

昭和21年の敗戦の混乱期。自ら情熱を持っていた教員生活に自信を喪失し、退職。どうしようもない虚無感から、「ヴァンプ」と噂される程の精神的堕落を覚え2重婚約をするまでに至る。さらに肺結核を患い、13年間の闘病生活が始まる。

アマゾンより引用

感想

この作品は三浦綾子の自伝小説。三浦綾子が好きなら「とりあえず読んどけ!」な1冊だと思う。

自伝小説と言っても、あくまでも「小説」だから一言一句間違いなく真実だとは言わないけれど、少しでも作者の生涯を知ることで作者の書いた作品をより深く知る事が出来るのは魅力だと思う。

例えば、三浦綾子の作品は「小学生くらい子どもの描写」がやたら上手い。

三浦綾子自身は子どもがおらず、子育てをした事がないのだけれど、小学校の教員をしていた事があり、小学生とは関わりが深かったからその経験が作品に生きている……なんて事は作者の遍歴を知らなければ分からない。

作者がキリスト教に入信してからの後半部はキリスト教を信じていない読者にはちょっと退屈な部分もあるけれど、早逝した恋人とのエピソードあたりまでは文句なしに面白い。

中学生時代この作品に心酔していた私は「結婚するなら前川正(作品の恋人)のような人がいい」と本気で思っていた。

流石に成長してくると「それは……無理だな。そもそも合わない」と思うようになったけれど。恋の駆け引きを伴わない真面目な恋愛は感動的なまでに清々しい。

そして後半部、病気での寝たきりの主人公が結婚するくだりも感動的だ。

主人公38歳。夫になる人は36歳。初婚年齢が上がってきている現在では珍しい事ではないけれど、あの当時からすると驚きの結婚だったと思う。

ましてや主人公は寝たきりの病人となればなおのことだ。「全米が泣いた!」的なノリで映画にしても通用するレベルだと思う。

真実は小説よりも奇なりとは言うけれど、本当にあった事だと言うから驚きだ。

物の価値観や考え方など古びてしまっている部分があるけれど、物語のドラマティックさ、文章の勢い、物語の深さ、どれを取ってみても現在に通用する作品だと思う。

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