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私は女になりたい 窪美澄 講談社

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前回読んだ『ははのれんあい』が良かったので続けて窪美澄作品を読んでみた。

……ゴメン。『ははのれんあい』は好きだったけど、今回は無理だった。たぶん「好き」の方向性が違うのだと思う。

私は好きじゃないけど安心してほしい。『私は女になりたい』だなんて題名なので「ああ…どうせヤリマンの女が主人公なんでしょ? それとも初な主婦が主人公のヤツ?」って思ってしまうだろうけど、どちらもハズレ。

刺さる人には刺さると思う。単純に私の心のツボには刺さらなかった…ってだけの話。恋愛小説の好みって、ラーメンの好みくらい多種多様なのだから仕方ない。

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私は女になりたい

ザックリとこんな内容
  • 主人公の赤澤奈美は47歳、美容皮膚科医。美人女医として知られているものの、実のところ雇われ美容外科医でオーナーと関係を持ちつつ仕事をしている。
  • 奈美はカメラマンだった夫とは別れ、シングルマザーとしてひとり息子を育て、老いた母の面倒を見ながら仕事一筋に生きてきたが元患者で14歳年下の業平公平と、事故に逢うように恋に落ちてしまう。
  • 仕事一筋に生きてきた奈美の世界が公平によって一変する。そして…

感想

『私は女になりたい』は簡単に説明すると47歳の女性の恋愛小説。

人間50年近く生きていると人それぞれに背負っている背景が違うと思う。

  • 既婚者、未婚者
  • 子どものいる人、いない人
  • 離婚を経験している人、そうでない人
  • 仕事をしている人、していない人

『私は女になりたい』のヒロインは離婚経験。美人美容外科医として働いていて、子どもはいるもののすでに自立している47歳の女性。法律的にも社会的にも恋愛をすることに対して支障はない。

主人公の恋愛を阻むものがあるとすれば年齢。どんなに美人で若く見える…と言っても、47歳。生物としての衰えは禁じ得ない。『私は女になりたい』を読んだ時点での私の年齢は48歳。主人公とは1歳しか変わらないので、主人公の気持ちは自分の事として受け取めることができた。

生物として衰えていく中で「恋したい」って気持ちは分かるし、年を重ねてからの恋愛はアリだと思う。まして主人公はバツイチ子持ちとは言うものの、子どもはすでに成人している独身女性なのだから恋をするのに障害はない…と言いたいところだけど、これがなかなか上手くいかない。

元夫のことや子どものこと。そして恋人の元婚約者の問題。若い頃の恋愛と違って、それぞがすでに人間関係を築いているからこそ、複雑な事情が発生する。

正直なところ『私は女になりたい』で描かれていた人間関係は「まぁ…わからなくもないけど、それってどうなの?」って感じで恋人達は決して聖人とは言えないし「良い人」とも言えない感じ。人間は失敗する生き物なので、彼らを責めることはできないのだけど、素直に応援したいとも思えない部分も多かった。

ヒロインにしても、恋人にしても恋に対しては真っ直ぐで交換が持てるのだけど「人としてはどうなの?」って部分も多く、主人公カップルの周囲にする人達についてもイマイチ好きになれなかったのが残念に思った。

ここ数年は中高年の恋を題材にした小説がちょくちょく出ててきている。少し前に読んだ村山由佳『はつ恋』も良かったし、今回の『私は女になりたい』も良かった。

ちょっと物足りなさを上げるとするなら『はつ恋』の主人公は小説家だったし『私は女になりたい』の場合は美人女医が主人公だった…ってこと。

普通の主婦だったりOLだったりする人が主人公の小説が出てきてもいいのにな……と思ったりもする。

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