森真沙子の作品を読むのは、かれこれ4冊目になるのだが(読書録には書いていないけれど)どの作品も、そこはかとなく「少女漫画の匂い」がする。
夢見がちな文章であるとか、設定がいかにも少女漫画というわけではないのに、なんとなく「あ。少女漫画」と感じる部分があるのだ。
そしてこの作品からももやはり「少女漫画臭」を感じてしまった。そして私は漫画好きなので、このノリは決して嫌いじゃない。
妖恋花 幻想押花帖
菊づくりにはげむ夫への妻の視線が冷たくなったとき、二人に悲劇が(「朧菊」)。
叔父の別荘で仕事をしているはずの女流翻訳家は、その日訪ねてみると姿がなく(「狂った童話」)。
ひき逃げ犯人を捜す唯一の手がかりは、その時に聞こえた短いフレーズで(「ワルツ・トリステ」)ほか、妖しい魅力が光る力作短編集。
アマゾンより引用
感想
幻想系のライトホラーを集めた短編集。ものすごく怖いという作品もなければ「上手い」と納得するような作品もなかった。
それほどよく出来た作品とは言えなかったのだが、作品を漂う雰囲気が良かったので、さらさらと読みきってしまった。
読んでいると、帰り道が分からなくなった子供のような、とんでもない場所で道を失ってしまったような、頼りない気分になってしまったのだ。
一般の長編小説なら、雰囲気だけで読ませるのは力不足な感じがだが、短編でしかも、ホラーとなると作品にただよう「雰囲気」は重要なポイントになると思う。
私が気に入ったのは表題作にもなっている『妖恋花』と『鬼灯』の2作品。
どちらも歪んだ恋の話だった。
恋と書くよりも「戀」と書きたいような……暑苦しい恋愛ものは苦手なのだが、森真沙子の描く歪んだ戀は「静かに狂っている」という感じがして、しっくり読むことができた。
狂うってのは本来、静かなものなのかも知れない……なんてことを思ったりした。
ものすごく良い作品とは言えないまでも草臥れている時に読むには丁度良い作品だと思う。なんとなくリハビリさせてもらった感じ。
これを期に森真沙子の作品を再読してみようかと思った。