SF作家、北野勇作がTwitterではじめた「ほぼ100字小説」200篇が収録されている。
北野勇作は『かめくん』で第22回日本SF大賞を受賞後、コツコツとSF小説を発表し続けている…と言っても、私が読んだことのあるのは『かめくん』『ザリガニマン』『きつねのつき』の3冊だけで、今回読んだ『100文字SF』で4冊目。
大ファン…ってほどでもないのだけれど『100文字SF』が、なかなかおもしろかったの思わず北野勇作のTwitterアカウントをフォローしてしまったほどだ。
100文字SF
- 作者がTwitterで発表した約2000篇の【ほぼ百字小説】から200篇を厳選。
- 100字で作る新しいSF。
- 1ページに1作でサクサク読み進められる。
感想
面白かった…とは言うものの、1作が100文字しかないだけに「感動した」「劇的な展開に驚いた」みたいなノリはない。ショートショートよりも短くて小さな物語群だ。
でも、ちょっと面白くて「流石は作家だな」と思わせてくれるだけのものはある。
収録されている作品を1つご紹介したい。
【ほぼ百字小説】(290) 世界が夜になると暗くなるのは、どういう仕組みなのか。それを解明するために世界の果てまで行って、真相を見届け、納得して帰ってきたことがある。子供の頃だ。歩いて果てまで行けるくらい、まだ世界は小さかった。
— 北野勇作 『100文字SF』発売中! (@yuusakukitano) March 8, 2016
こんな感じの短い作品が200篇。よくぞ200篇も書いたものだと感心してしまう。もっと感心するのは、この200篇は2000篇の中から選ばれた精鋭作品だってこと。いくら短いと言っても2000篇も書き続けられること自体、凄いと思う。
200篇ある作品の中には正直言って「ふ~ん」としか言えないようなものもあるけれど、ハッとするような作品もあれば、ちょっと心に染みるような作品もあって読んでいて飽きないのだ。
短いのでアッという間に読み終えてしまうのだけど、カバンのなかに忍ばせておいて、電車の中や病院の待ち時間なんかにちょいちょい読みたい感じ。図書館で借りた本だけど、手元に置いておきたいので、文庫本版をアマゾンでポチってしまった。
Twitterは140字。『100文字SF』は100字。Twitterなんて誰でも出来るし、100字くらいの文章は誰だって書ける。でも『100文字SF』は素人のTwitterとは明らかに違う。プロの作家の文章って凄いな…と改めて感じさせてくれた1冊だった。