悪趣味な感じの悪趣味な読み物だと思う。
精神病院の閉鎖病棟に強制入院させられた女性の物語なのだけど、こういう類の物を読んで「面白い」って思ってしまう自分に、ちょっと凹んでしまった。
でも、おかげで楽しい時間を過ごさせてもらった。
クワイエットルームにようこそ
恋人との大喧嘩の果て、薬の過剰摂取で精神病院の閉鎖病棟に担ぎ込まれた明日香。そこで拒食・過食・虚言・自傷など、事情を抱えた患者やナースと出会う。
普通と特別、正常と異常…境界線をさ迷う明日香がたどり着いた場所はどこか?悲しくて笑うしかない、絶望から再生への14日間を描いた、第134回芥川賞候補作。
アマゾンより引用
感想
演劇畑の人が書いた作品らしく、話の転がし方や会話のテンポがとても良い。落としどころやオチのつけかたも、ものすごく「お芝居」のノリだった。
いやらい感じの毒が効いていて、引き込まれる物はあるのだけれど「小説」という形になると、毒が効きすぎているような気がした。
人間、誰しも「悪い好奇心」を持っていて、そこをくすぐると手っ取り早く「面白い」と思わせることが出来るのだけど、これって反則技だと思う。
芝居だったら良くて、小説になると、いただけない……ってのは、独断と偏見に満ちていると思うが「わざわざ高いお金を出して劇場に行かなければ観られない」とう芝居は「お金が掛かって面倒臭いのを承知で求めてしまう人達」を相手に演じるからこそ許される表現者としての「甘え」がある。
それを小説という媒体にぶつけるのは、いかがな物かと思ったりするのだ。
あぁ……だけど面白かった。
漫画を読むくらいの調子で読めてしまえる簡単さと、嫌らしい毒がとても良かった。
最後の最後で、ちょっと真面目に良い感じでまとまってしまっているのは姑息な感じがして、いただけなかったけど「芝居」だったら、素直に高い評価を出してしまうだろうと思う。
ただ、この作品は芝居ではなく小説なので、そこまで良かったとは言い難い。
しかしながら「演劇関係者」が書いた小説って、ことごとくイマイチな物が多い。不思議とエッセイは当たりが多いのだけど。
もしかすると、たまたまイマイチな物ばかりに当たっているのかも知れないけれど、今まで読んだ物で気に入ったのは中島らもだけのような気がする。
しばらく、このテの物は鬼門にするかなぁ……と思った1冊だった。