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背中の勲章 吉村昭 新潮文庫

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痺れちゃうなぁ。吉村昭の文章は。

「もう、好き過ぎてどうしましょう?」と言うくらい好きだ。最近の作家さんの中で男と職人を書かせたら、この人の右に出る人はいないんじゃないかと思う。

渋い……渋すぎる。背中で語る男。男の中の男。

吉村昭は「黙して語らず」というような古いタイプの男好きにはたまらない作家さんだ。

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背中の勲章

昭和17年4月18日――太平洋上の哨戒線で敵機動艦隊を発見した特設監視艇・長渡丸の乗員は、玉砕を覚悟で配置につき、死の瞬間を待った。けれども中村一等水兵以下五名は、米軍の捕虜となり、背中にPWの文字のついた服を着せられて、アメリカ本土を転々としながら抑留生活をおくった――。運命のいたずらに哭く海の勇士の悲しい境涯を通して描く、小説太平洋戦争裏面史。

アマゾンより引用

感想

今回は戦記物。第二次世界大戦でアメリカ軍の捕虜になって人が主人公。

戦記物……と言うよりも監獄物の印象の方が強いかも知れない。毎度のことだが、作者がこのテの話の主人公に据える人は特別な人ではなくて「どこにでもいた普通の日本人」である。

だが、普通ながらも「不屈の心」を備えているところが興味深い。彼らは決して挫けなかった訳ではないのだろうが、生きることへの執着心が強いのだろう。

そんな主人公の生き様は「人間は、どんなことをしても、どんな状況に追い込まれてもと取りあえず生きていけるのだなぁ」と思わせてくれる。

主人公が恥辱にまみれた捕虜生活の中で、それでも人として生きようとする姿は神々しくさえある。

戦争というテーマを扱っているだけに、どうしても「戦争」という非常事態に視線がいってしまいがちだが、作者の作品は人間の本質を垣間見させてくれるところが魅力だと思う。

生きること、生き続けることは、喜びや楽しみよりも辛いことの方が多いかも知れないが「それでも生きよう。生きたい」と思わせてくれる1冊だった。

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