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コルセット 姫野カオルコ 新潮社

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前回、読んだ本の感想に「ぐるぐると似たような設定の小説ばかりを読まされるのは、もうウンザリ」と書いたのだけど、今回の作品は今までの作品とは少し違っていた。

姫野カオルコの持ち味はそのままだったけれど「田舎」「禁欲」のキーワードが外されていて「これは、今までにない新しさだ」とてページを繰ることが出来た。

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コルセット

ザックリとこんな話
  • 連作短編形式で登場人物達はお金持ちだった。
  • 美しく爛れた人生には、退屈しかない…と言う爛れた世界。
  • エッチ臭く淫乱テイストな物語。

感想

『コルセット』の登場人物は上流階級の人々。小説を読む楽しみの1つに「自分と掛け離れた世界を覗き見る」ってところがあるけれど、そういう意味では面白い設定だったと思う。

しかし残念ながら作者の勉強不足なのか、実体験が無さ過ぎるのか「お金持ち設定」が全く生きていなかった。全編を通して、哀しいくらいに貧乏臭いのだ。ちっとも酔わせてくれないのだ。

「すごいなぁ。素敵だなぁ」と思わせてくれる場面が1つでもあれば良かったのだけど、そういう類の部分は1つもなかった。

たとえ現実とは違っていたとしても、でっち上げのお金持ち像だったとしても、この手の小説には「わおっ」と思わせてくれる部分が必要じゃないかと思う。

そして、もう1つ気になったのは登場する女達が揃いも揃って、陶器のように精気が無いということ。

貪欲にセックスをしたりしているにも係わらず、なんだか血が通っていいような気がしてならなかった。目玉を描かれていない人形のような印象。誰にも感情を沿わせることが出来なかったばかりか、魅力的だとも思えなかった。

あまり認めたくないのだけれど、この姫野カオルコの旬は終わってしまったのかも知れない。

それとも、よほど苦手な材料に手を付けてしまっただけなのか?

なんだかんだ言って好きな作家さんなだけに「次こそは」と思ってしまうのだけど、そろそろ諦め時なのだろうか。まったくもって満足の出来ない1冊だった。


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