作者の西田征史はシナリオライターで『小野寺の弟・小野寺の姉』は映画原作本とのこと。
パッっとしない独身の姉と、パッとしない独身の弟の生活が描かれている。人の勧められて読んでみた。
「読後、心が温かくなる良い作品。ちょっと笑えて、ちょっとホロッっとするよ」と言われていたのだけれど、これは読む人を選ぶ本だと思う。
心が温かくなるよりも、切なくてたまらなかった。
小野寺の弟・小野寺の姉
早くに両親を亡くし一軒家でずっと一緒に暮らす、小野寺進と小野寺より子。お互いのことを心から思いやるあまり、不器用な言動ばかり出てしまう。
ある日、そんな二人の元に誤配送の郵便が届く。その手紙を契機に弟と姉それぞれの恋と人生が動き始める。
最注目のクリエイターが描き出す〝ありがとうの香り〟に包まれた、笑顔と涙の〝姉弟の物語〟。
アマゾンより引用
感想
物語に出てくる「小野寺の姉」はどうしようもなく私自身だった。
私と小野寺の姉の違いは、私は運良く結婚できたって事だ。私は夫と出会っていなければ、小野寺の姉のように、実家で暮らしてたと思われる。(私の場合は弟と2人きりではなく母もいるけれど)。
思うに。この作品は「他人事」と思って読むと、ほんわか面白いのだと思うけれど「自分だ」と思って読むと切ないのだと思う。
まぁ、だからと言って作品に出てくる小野寺の弟と、小野寺の姉が不幸かと言うとそうではない。
不器用ながらも「どっこい生きている」って感じ。たぶん彼らは自分の身の丈にあった幸せを大切にしながら生きていくのだと思う。
いい話と言えば良い話なのだけど、報われない感が半端無い。「頼むから幸せになってくれよ。小野寺の弟・小野寺の姉」と思わずにはいられなかった。
作者は向田邦子好きなのかな……と思う。なんとなく似た雰囲気。食事のシーンとか、生活の描き方とか。
向田邦子系の好きな人はそれなりに楽しめると思う。ご飯の描写とか美味しそうだし。だけど、これは本を読むよりも、映画で観た方が良いのではないかと思った1冊だった。