今まで今の今まで「なんとなく、この人とは合わない気がする」という思い込みから読んだことの無かった作家さんだったのだけど、芥川賞受賞作と言うことでチャレンジしてみた。
ある古い家と、そこに隣接するアパートに住む人達の生活を切り取った物語。ひと言で言うと「雰囲気小説」だと思う。
昭和の臭いのするアパートとか、いかにもな洋館とか。自分探し(笑)な人達とか。作者の描く建物や風景の描写は嫌いじゃない。
むしろ好きだ。だけど、1つの物語として読むと「なんだかなぁ」な印象。
春の庭
東京・世田谷の取り壊し間近のアパートに住む太郎は、住人の女と知り合う。
彼女は隣に建つ「水色の家」に、異様な関心を示していた。街に積み重なる時間の中で、彼らが見つけたものとは――
第151回芥川賞に輝く表題作に、「糸」「見えない」「出かける準備」の三篇を加え、作家の揺るぎない才能を示した小説集。
アマゾンより引用
感想
この作品、悪くないんだけど、こう……心に食い込んでこない。
癖がなくて読みやすい文章なのに何故か個性が感じられない。
1人で喫茶店に行って珈琲でも飲みながらダラダラと読むにはもってこいだと思うのだけど、読み終えた瞬間に物語の筋を忘れちゃいそうな作品って感じ。
パーツとして読むには良いのだけれど、一貫性が感じられない。「あえて」の試みだと言わたら「そうですか」と言わざるをえないのだけど。
読後感には「気だるさ」しか残らなかった。
気持ちが良いでもなく、不愉快でもなく。「こりゃ、参った」と思うところも無かった。この曖昧な感じが文学的だと言われたら、そうなのかも知れないけれど。
ミニシアター系の映画にしたら面白いかも知れない。だけど小説として読むには物足りない。個人的にはイマイチとしか思えない作品だった。
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