最近やけに眠いのだ。春だから眠いのか、草臥れているから眠いのか。
眠いという意識は、ほとんどないのに「気がつけば寝ている」ということが多くていけない。私はねむくなると必ず、この作品の主人公である「ねむいねずみ」のことを思い出してしまう。
ねむいねむいねずみ 佐々木マキ
旅をしていたねずみが、1日中歩いてくたびれてたどりついた家は、だれもいない古い家。
ねむくてねむくて、2階にあったベッドにもぐりこんで眠ろうとするのですが……。
アマゾンより引用
感想
1人旅をしているねずみが、歩き疲れて1軒空き家で夜を過ごそうとするのだが、どうしたものか邪魔が入って、なかなか眠れない……というだけのお話である。
「さあ。もう眠れるぞ」と眠りかけた頃に何某かの邪魔が入って……というパターンが繰り返される。
眠いのに寝かせてもらえないってのは、なんとも同情に耐えない。
子供の頃は「楽しい話」として受け止めていたが、大人になって読むと、やけに入魂して読んでしまうのは「ねむいねずみ」の気持ちに入り込んでしまうからだろう。
絵本なのでネタバレをご容赦いただきたいのだが、最終的にねずみは、ちゃんと眠れるのだ。
満足な眠りではなかったけれど。
そして不思議なことに「誰もいない空き家」のはずが、ねずみが朝、起きてくると台所に美味しそうな朝食が用意されている。
トースト、チーズ、野菜サラダ、牛乳……なんとも美味しそうな朝食がたまらない。「明けない夜はない」なんて言葉があるけれど、なんとなくホッとしてしまうオチである。
物語は「それなりに面白い」という程度なのだが、作者の絵がとても魅力的なのだ。家だの、椅子だの、机だのという無機質なものがなんとなく意思を持った生き物のように描かれている。
これはこの作品に限ったことではなくて、他の作品にも共通するので、作者の持ち味なのだろうなぁ。
机や椅子が、今にも動きだしそうな、止まっているのに動きを感じる絵は、今みてもドキドキしてしまう。
私の中の佐々木マキは「絵本作家さん」なのだが、村上春樹の『羊男のクリスマス』にも描いていた人なので、もしかしたら、そっちの方がメジャーかも知れない。
『羊男』好きの方には、ぜひオススメしたい1冊である。
図書館の絵本コーナーへ行けば、何冊かは置いてあるだろうと思うし。
我が家では「ねむいねむいねずみのように眠い」と言うだけで「ものすごく眠いんだな」というのが暗黙の了解になっているのだが、一歩外に出ると通用しないのが、ちょっと残念。
なんとか流行させることが出来ないものかなぁ……って無理か。