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人喰観音 篠たまき 早川書房

初挑戦の作家さんの作品。図書館で表紙惚れして手にとったので予備知識無しで挑んだ。

表紙のおどろおどろしさが素晴らしい。「これはホラー小説ですよ」「横溝正史とか江戸川乱歩的な軽くエッチっぽい作品ですよ」と主張している気がしたのだけど、実際その通りだった。横溝正史、江戸川乱歩、赤江瀑の世界が好きな人なら面白いと思う。

そして題名からも想像出来ると思うのだけど、カニバリズム要素が入っているので、そっち系が苦手な方にはオススメしません。「気持ち悪い」と言ってしまえばそれまでの作品なので、そこのところはひとつ。

人魚の肉を食べたせいで不老不死になった」と言う『スイ』と言う女とスイと関わる人達の物語だった。

スイは並外れた美貌と美しい身体と予言する力を持つ。知能は高くなくて(軽い知的障害があるような描写)で年を取らない。優しい性格で「主」となった人に尽くす性質を持っている。

物語の時代設定はハッキリ書かれていないけれど、なんとなく明治から大正かな…と言う印象。スイを囲う「主」は物語の中で次々と変わっていく。

  • 穀潰しの惣領息子と出戻りの老媼
  • 男を好む旦那様と忠節を尽くす石女
  • 姦淫された箱入り娘と不器量な妹

スイは成り行きに身を任せるように主を変えながら、生肉を貪る。

設定的に面白いと思ったのはスイは最初から人肉を食う悪鬼のような存在ではなくて、動物の生肉を食べていた。スイ自身は自分の意思を示す事がなく、動物の肉から人間の肉を食べるようになったのも、囲われていた人間がそう仕向けていったからに過ぎない。

この作品はホラーなのだけど恐ろしい異形の者に襲われるタイプの話ではなくて、むしろ人間に潜む襲われる部分を引き出していく形になっている。スイとか関わった人間は、最初から狂っていた訳ではないのだけれど、スイと関わることで狂気の世界へと突入していく。

エロスとホラーの親和性を存分に味わえるエピソードばかりで、展開としては全員「人としてアウト!」でしかないのだけれど、おどろおどろしくて面白かった。

現代にもホラーはあるけれど、私はやっぱり電気の届かないような「明治・大正・昭和初期」を背景にしたホラーが好きだ。テレビから這い出してくる異形の者より、薄暗いお屋敷の片隅で人肉を貪る異形の者に惹かれてしまう。

最近には珍しタイプのホラー小説で面白かった。

作者の篠たまきは他にも本を出しているようなので、是非探して読んでみたい。

人喰観音 篠たまき 早川書房