今さらながらのベストセラー本。図書館で予約していたのが、やっと手元に届いた。
「お笑い芸人に小説が書けるのかな?」という好奇心で読んでみたのだけれど、想像していた以上に面白かった。
最近すっかり見なくなった「昭和の香りのする作品」だった。お洒落てなんて微塵もなくて、泥臭くて野暮ったい。だが、それがいい。
陰日向に咲く
ホームレスを夢見る会社員。売れないアイドルを一途に応援する青年。合コンで知り合った男に遊ばれる女子大生。老婆に詐欺を働く借金まみれのギャンブラー。場末の舞台に立つお笑いコンビ。
彼らの陽のあたらない人生に、時にひとすじの光が差す―。不器用に生きる人々をユーモア溢れる筆致で描き、高い評価を獲得した感動の小説デヴュー作。
アマゾンより引用
感想
登場人物達は揃いも揃って不器用で純情。世の中からはみ出し気味なのが、とても良かった。
なんとなく連城三紀彦の短編を思い出してしまった。ちょっと雰囲気が似ているように思う。
「純情馬鹿」ってのは、人の心を無条件に打つのだなぁ。ちょっとグッっときてしまった。
しかし、のめり込むほど面白かったかと問われるとそうでも無かった。
短編連作の形をとっている事もあって「ツギハギの覚書」という印象。小説として、1つの物語として読むには物足りなかったのだ。
深味が無いというか、コクが無いというか。どうにも薄味で物足りない。1つ1つのエピソードは上手いと思うのだけど「上手い」以上の感動が無い。
何かに例えてみるなら、良い素材を集めて料理を作ったのに、何故か、可も無く不可も無い1皿が出来あがってしまった……ってところだろうか。
すごく惜しいなぁ。
でも、結局のところ作品というのは完成したものがすべてなので「いまいち」としか言いようがない。
きっと、劇団ひとりは良いセンスを持っているのだろう。
だけどセンスだけで作品は成り立たないのだ。それなりに面白く読んだけれど、きっとすぐに忘れてしまうだろうなぁ……と思う1冊だった。