林芙美子の伝記風小説。主人公は林芙美子。
その時代生きた作家さんや、時代そのものが好きな人が読むと面白い作品だと思う。ただし、桐野夏生好きの人に限る。
物語の途中までは面白く読んでいたのだけれど、途中から飽きてしまった。
私は林芙美子が好きなので、とても興味深く読んだ。
実際の林芙美子と、この作品の中での林芙美子がかけ離れていても、それはそれで良いと思うのだけど「林芙美子=桐野夏生」的なノリがどうにもいただけなかった。
ナニカアル
昭和十七年、林芙美子は偽装病院船で南方へ向かった。
陸軍の嘱託として文章で戦意高揚に努めよ、という命を受けて、ようやく辿り着いたボルネオ島で、新聞記者・斎藤謙太郎と再会する。
年下の愛人との逢瀬に心を熱くする芙美子。だが、ここは楽園などではなかった―。
アマゾンより引用
感想
桐野夏生の作品は大好きなのだけど、ここ数年はマンネリ化してきているように思う。
切り口の違う作品をか書いているのに、結局のところ「何を書いても桐野夏生」な感じになっているように思えてならない。
市原悦子が「何を演じても市原悦子」であるように、あるいは木村拓哉が「何をやっても木村拓哉」であるように。
それは桐野夏生の力強い個性の成せる技だと思うので、その事自体は否定しない。
だけど、それを心底好きだと言えるのはファン限定ではなかろうか。私のように生温い「桐野夏生好き」レベルの人間にはついていけない世界だ。
正直、飽きた。
桐野夏生の魅力って、読者をビックリさせてくれるところにあると思う。
それが「あ~。やっぱり、そう来たのか。まぁ、桐野夏生だしねぇ」ってなってしまっては魅力半減。
もっと読み手の度肝を抜いて欲しい。この作品は悪くない。悪くないけど「桐野ワールド」の枠の中でこじんまりと収まる秀作でしかないと思う。
是非とも次の作品に期待したい。
でも、次の作品で似たような感想を持ってしまうようなら私はそれを機に桐野夏生から卒業すると思う。そんなことを思わせる1冊だった。