村田沙耶香。相変わらずキレッキレだった。
個人的には面白かったけれど、この作品は胸糞系なのでオススメはしない。吉村萬壱の『臣女』のような気持ち悪い世界観が平気な人なら大丈夫かも。
なんだかんだ言いながら村田沙耶香はそこそこ読んでいるけれど、今まで読んだ作品の中でも相当クレイジーな作品だった。
今回は多少ネタバレを含む感想になるので、ネタバレが苦手な方はご遠慮ください。
地球星人
私はいつまで生き延びればいいのだろう。いつか、生き延びなくても生きていられるようになるのだろうか。
地球では、若い女は恋愛をしてセックスをするべきで、恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう―。
常識を破壊する衝撃のラスト。
アマゾンより引用
感想
物語の導入部は厨二病的な感じでスタートする。
ヒロインは小学生。自分の事を魔法少女だと思っていて、心を許す従兄弟はポハピピンポボピア星人…と言う設定。
村田沙耶香は1979年生まれで1972年生まれの私とは年齢が近いので分かるのだけど、村田沙耶香が思春期の頃って『ぼくの地球を守って』だの『美少女戦士セーラームーン』だのと言った宇宙人設定とか、転生設定が流行っていた。
導入部を読んだだけで「あああっ。恥ずかしい~」と自分自身の黒歴史を振り返る読者は多いと思われる。
さて。魔法少女(と言う設定)の主人公は一般的なサラリーマン家庭に育つのだけど、本人自身はクレイジーだし、家族関係には恵まれないしで散々な少女時代を過ごす。
ポハピピンポボピア星人の従兄弟とはある出来事がキッカケで引き離されることになる。
その後、主人公は塾の講師からわいせつ行為を受けることなる。
塾の講師関係で大きな事件があった後は、いっきに時間が進んで主人公は結婚した状態で物語が進んでいく。
主人公の結婚は一般的な結婚ではなく、インターネットで相手を探して性行為を伴わない契約結婚のようなものだった。
主人公と夫。そして再会したポハピピンポボピア星人の従兄弟を中心にラストへと進んでいくのだけれど、最初から最後までクレイジーで人によっては読んでいるだけで気分が悪くなると思う。
これは褒め言葉として受け取って戴きたいのだけれど、村田沙耶香は頭がオカシイと思う。
この作品は芥川賞を受賞してから1作目とのことだけど、芥川賞を受賞していなければ出版社は村田沙耶香にここまで好き勝手に書かせてくれなかったんじゃないかと思う。
今さらだけど「芥川賞受賞して良かったね」とシミジミ思ってしまった。
面白かったけれどラストはちょっと不満が残った。
なまじっかカニバリズムとか入れちゃったせいで、主人公達が普通の変質者に成り下がってしまった気がするのだ。
せっかく面白い世界観を作り上げているのに「なんかグロい胸糞小説」と印象付けてしまうのは勿体無いように思う。
多少の不満はあるものの、読み応えのある作品だった。村田沙耶香のぶっ飛び具合はこれからも注目していきたい。