もしも私が「夏休み読書感想文課題図書」を選ぶ立場にあったなら、迷わずこの作品を選ぶ。面白かった。
実に面白かった。
とある国に「チョコレート禁止法」などという、アメリカの「禁酒法」みたいな法律が出来て、主人公のちびっこが、チョコレートの密売だの、チョコレートバーを開く……という、馬鹿馬鹿しく、子供騙しな筋書きだった。
チョコレート・アンダーグラウンド
舞台はイギリス。選挙で勝利をおさめた“健全健康党”は、なんと“チョコレート禁止法”を発令した!国じゅうから甘いものが処分されていく…。
そんなおかしな法律に戦いを挑むことにしたハントリーとスマッジャーは、チョコレートを密造し、“地下チョコバー”を始めることにした!チョコレートがこの世からなくなったら、あなたはどうしますか?
禁チョコなんて、ダイエットのときしかしたことない!読めばきっと、チョコレートが食べたくなる…。
アマゾンより引用
感想
しかしながら「子供騙し」と侮ってはいけない。面白いのだ。文句なしに。
だいたいからして人間は「反抗者」に惹かれるように出来ているのだ。政府に反抗するってシュチュエーションだけでも、ときめいてしまうではないか。
そして、この作品の素晴らしいところは、子供が英雄になる単純な図式を一歩進めて、大人が子供を一人前の「友人」として協力者になってくれるところにあると思う。
そして、その大人達が素晴らしくカッコイイのだ。
ネタバレで恐縮なのだが、チョコレートの密売を手伝っていた菓子屋の主人の初老の女性が、組織につかまったとき、とっさにボケ老人を装い、追求を逃れ、収容された病院で、じっと仲間の助けを待つ……というくだりは最高だった。
あれは紛れもなく大人の知恵だ。
そして、レジスタンスを結成した書店店主が主人公の少年に「復讐の味は苦いものだ」と言い聞かせる場面はグッときた。良識のある大人とは彼らのような人のことを言うのだろうと思った。
シリアスな場面と、痛快な場面が良い具合にミックスされていて読みやすいし、読後感も素晴らしい。
私はチョコレートと本が好きだという人すべてに、この本を薦めたい。
お気に入りのチョコレートをつまみながら、気楽に楽しんでいただきたい。
文句なしに絶賛できる本と出会えるのは、本読みとして最高の幸せだと思う。今回の感想は、この作品に敬意を表して、この言葉で締めたいと思う。
チョコレートばんざい!