舞台は18世紀のヴェネツィア。主人公は慈善修道院で育てられた女性。
題名の『ピエタ』は慈善修道院の名前で、ピエタでは音楽活動を熱心に行っていて、その収益を運営の一端にあてていた。
主人公は幼い頃から『四季』でおなじみのヴィヴァルディの指導を受けてきたのだけれど、物語はヴィヴァルディの訃報からスタートする。
ピエタ
18世紀ヴェネツィア。『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、孤児たちを養育するピエタ慈善院で、“合奏・合唱の娘たち”を指導していた。
ある日教え子エミーリアのもとに恩師の訃報が届く―史実を基に、女性たちの交流と絆を瑞々しく描いた傑作。
アマゾンより引用
感想
ヴィヴァルディにまつわる思い出と、ヴィヴァルディが残したと言う楽譜の謎がメインで物語は進んでいくのだけれど、謎解きミステリーではなく、実に淡々とした物語だった。
かなりの人数の登場人物が出てくるのだけれど、圧倒的に女性が多くて、なんだか少女小説のようだった。
もっとも、主人公達は少女ではなく「おばちゃん」だったり「おばあちゃん」だったりするのだけれど、主人公が慈善修道院育ちの未婚女性ということもあってか、全体的に乙女の香りのする作品に仕上がっている。
登場人物達は、それぞれ色々な想いを抱えて生きていて、楽譜の謎を追うことでそれらが浮き彫りになってくる。
その表現が奥ゆかしくて、実に良い。
そして、誰もがヴィヴァルディを愛していて、彼女達の想い出からヴィヴァルディの人となりが分かってくる。私がもっとも気に入ったのは高級娼婦のクラウディア。あんな女性に憧れる。
静かで気持ちの良い作品だと思う。かなり好み。少
し残念だったのは、登場人物達が全員「いい人」として描かれているところだろうか。正直、ちょっと物足りない。だからこそ「少女小説のようだった」と感じたのだとは思うのだけど。
しかし、この作品は残念なところよりも良かったところの方がずっと強く出ていたと思う。
大島真寿美の作品は「気が向いたときに読む」程度で追いかけていたのだけれど、こんなに化ける人だったとは思ってもみなかった。
次の作品にはものすごく期待してしまうではないか。次の作品も必ず読もうと思った。