ちょっとちょっと。面白いじゃないの。『食堂のおばちゃん』の続編。続編って大抵の場合本編より面白くないと相場が決まっているのだけれど、この作品は本編よりも面白い。ネタが続く限りシリーズ化して戴きたいと思ってしまった。たぶんドラマ化してもウケると思う。作者は人情話が上手過ぎると思う。
『食堂のおばちゃん』に登場する嫁姑コンビの姑、一子が若かりし頃の物語。佃はじめ食が洋食屋をしていた時のお話。古き良き昭和が詰まっている。漫画で例えるならビッグコミックオリジナルの『深夜食堂』が好きな人は好きだと思う。あるいは『20世紀少年』が好きな世代も微妙にイケるのではないかな。若者世代からすると昔話だけど、中年世代からすると「ちょっと昔の話」ってところだ。
美人の一子と、一子の夫、腕の良いコックの孝蔵を中心に下町の人達の人情話が連作短編形式になっている。非常に優しい世界なので悪い人は登場しない。だが、それが良い。登場人物も設定もキッチリと作り込まれているので読んでいて気持ちが良い。特に孝蔵の弟子達……若者が悩みながら成長する姿は読んでいて応援したくなってしまう。
人情味のあるマスターとママがいて、美味しい洋食が出てくる洋食屋さん。本当にあるのなら私も行ってみたいと心から思った。出てくる料理は美味しそうだし、何より居心地が良さそうなのが良い。1人でふらっと入っても気にならない感じと言うのかな。孝蔵さんの作る洋食、出来ることなら食べてみたい。料理が登場する小説って、どうしても料理が中心になってしまいがちだけど、そこに人情話をちゃんと入れてきているところが素晴らしい。朝の連続テレビ小説的爽やかと言えば良いのかな。万人受けする面白さだと思う。
作者の作品を読むのはこれで4冊目だけど、これからも断然応援したい。そして出来ることなら、この物語の続きを読ませて戴きたいな……と思う。
恋するハンバーグ 佃はじめ食堂 山口恵以子 角川春樹事務所