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情熱 桜木紫乃 集英社

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『情熱』は中高年の生き方をテーマにした短編集。若い人にはピンとこない内容かも知れない。私自身は年齢的に理解できる部分が多かったので興味深く読み進めることができた。

作者の桜木紫乃は2026年現在61歳。世代的にはバブル逃げ切り組。大きなくくりで言うと私と近しい年齢ではあるものの、私はバブルが弾けてから社会に出た人間なので理解できない部分も多かった。

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情熱

ザックリとこんな内容
  • 「兎に角」「スターダスト」「ひも」「グレーでいいじゃない」「らっきょうとクロッカス」「情熱」の全6編からなる短編集。
  • 40年ぶりに再会した同級生や、「ボケたら関係解消」を約束した70代のホストと美容師、遅咲き小説家と女性大学教授など、大人たちのさまざまな関係性が描かれる。
  • 各短編では、恋愛や仕事、老い、再会といった人生の節目を背景に、それぞれの登場人物が抱える迷いや思いが描かれている。

感想

収録されている6作品のうち全て面白かったか…と言われると正直、微妙ではある。なので今回は特に印象に残った面白かった作品とツッコミたい作品を1つずつピックアップしてみた。

面白かったのは70代のホストが美容師に飼われる「ひも」。「ボケたら関係解消」と言う取り決めがリアルに思えた。それにしても高齢ホストって実際にいるのだろうか? 「シニアホスト」と呼ばれるホストがいる…と言う記事を読んだことがあるけれど70代となるとどうなのだろう……などと言う疑問はともかく「性的な繋がりを抜きにした関係」に価値を見出す感覚は私にも理解できる。

「ひも」の中で描かれたやり取りや事件は「人間って何歳になってもやることは変わらないのだなぁ」ということ。人間の感情活動は普遍的なものなのだと思う。

ツッコミたい作品は「らっきょうとクロッカス」。巷では評判が良さそうなのだけど、私は読んでいてモヤモヤしてしまった。50歳で出世コースから外れた裁判所職員の青田芙美が妻を亡くした男性に恋をする物語。

青田芙美の設定がどうにも好きになれなかったし、その行動にもモヤモヤした。

  • ずっとエリートコースを走ってきた
  • 料理が得意で自炊したりする
  • 気になる男性に料理を作ってタッパー詰めにして冷蔵便で送りつける

特に「うへぇ」となったのは料理をタッパー詰めにして冷蔵便で送りつけるところ。いやね……若い人なら分からなくもないのよ。全力で好きになって相手を射止めたいとするのであれば。だけど50歳の女性の行動としてはどうかと思う。ましてや独身とは言うものの「妻を亡くしたばかりの男性」って設定なのだ。まだ妻の死を受け入れられていない相手に「そこまでするか?」と思ってしまった。

遠距離間で文章のみのやり取りをして気持ちを通じ合わせていく過程などは好感が持てたけれど、女性特有のあざとさが前に出過ぎている気がして、素直になれなかった。

実のところどの作品も「なんか違うな…」と違和感があり、登場人物に寄り添うことができなくて残念だった。

桜木紫乃は短編よりも1人の人生を掘り下げていく長編の方が向いているのではないかな。

ぜひ桜木紫乃の新作長編小説を読んでみたい。

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