先日、宝塚歌劇を観に行くのに浴衣で出掛けた。
「宝塚歌劇を観に行く」と言うと「お金持ちの趣味って感じ」とか「ドレスコードが厳しそう」みたいなことを言われがちだけど、全くもってそんなことは無い。昔から宝塚歌劇は「観劇の邪魔をしなければオールオッケー」くらいの寛容さがある。
宝塚歌劇を観劇する人の服装は様々で「みんなちがって、みんないい」の精神。キリッと着物を着た奥様がいるかと思えば、ロリータ・ファッションに身を包んだお嬢様もいらっしゃる。「奥様、そのドレスはどこでお買い求めですか?」と詰め寄りたくなるようなワンピースの方もいるし、男性だとタキシードを着ている方もいる。そうかと思えばTシャツ&ジーンズの方もいる。
私は…と言うと。勝負服的なワンピースで観劇することが多かったのだけど着物で観劇する人に憧れを抱いていた。しかし。着物での観劇って宝塚界隈では賛否があるのも事実。帯を締めていると前のめり気味に座らざるを得ないので後列の人の邪魔だ…と言う人がいるみたい。
ところが先日の『ポーの一族』でご用意された座席はS+席の最後列だった。私の後ろはS+席とS席を分ける通路になっているので、後ろに観客は座っていない。

S+最後列
「この席なら帯締めて観劇しても邪魔にはならないだろう」と思い至り、浴衣で観劇することにした。どうして着物ではなく浴衣かと言いますとですね。そもそも私は浴衣にしたって着物にしたって着慣れていない。せめて着物より楽に着ることができる浴衣ならどうにかなるだろう……って作戦。
若い頃に買った絞りの浴衣にグレーの帯を合わせ、紫色の帯締めにとんぼ玉の帯留めを合わせてみた。観劇前にYouTubeなどを見て実際に着て練習した上で、当日は見えないところを数箇所ダブルクリップでバチ止めして着崩れ対策も行った。何しろ素人なので着崩れるのは何より怖い。

浴衣
そして迎えた当日。浴衣に日傘……と言ういで立ちで宝塚に向かった。心なしか背筋がピンと伸びる気がして良い感じだ。楽しみにしていた『ポーの一族』を憧れていた着物(浴衣だけど)姿で、楽しみにしていた『ポーの一族』を堪能した。最高過ぎる1日だった。
そして私はこの最高過ぎる1日の思い出を胸に「もう2度と着物や浴衣を着て観劇はしない」と心に誓った。
浴衣は着物よりも楽ちん……とは言うものの、温泉浴衣ではないので「帯を締める」って時点で、まあまあキツイ。そもそも着慣れていないものを着て立ち居振る舞いに気を使いつつ1日過ごすのはなかなかしんどい。
さらに言うなら帰宅後の始末。浴衣も浴衣スリップも汗じみにならないように、当日洗って干して、翌日はアイロン。洗えない帯(安物ではあるけど)はファブリーズして仕舞う……という工程が必要。出勤前にアイロンをしながら「ああ…こんなことしてる時間があるなら、観劇の感想をブログに書き記したい……アイロンじゃなくてパソコンと向き合いたい」と身悶えした。
最近、着物を着ている人がやたら目につく。
宝塚歌劇だけでなく美術館とか洋館巡りに行くと着物を着た素敵な女性をよく見掛ける。若い人もいれば、私と同じくらいの中高年女性もいる。古典的なスタイルだけでなく、帽子やブーツなどを上手に組み合わせて新しいコーディネートを楽しんでいる人も素敵だ。だけど彼女達は頑張っているのだ。着物愛だけでなく「綺麗であろうとする努力」がなければ着物を楽しむことはできない。
私には着物を着るために必要な美意識も覚悟も足りなかった。これからは着物への憧れを抱きつつ、着物を着た美しい女性を眺めるだけにする。もう浴衣なんて着ない。

