町田その子の作品は『52ヘルツのクジラたち』に続いて2冊目。『52ヘルツのクジラたち』は子どもの虐待と虐待を受けた子どもが立ち直っていく姿を描いていたけれど、今回の『蛍たちの祈り』も似たようなテーマの作品だった。
『蛍たちの祈り』を読んだ後で『52ヘルツのクジラたち』を読んだ時にどんな感想を持ったのかを確認したところ、2作品ともほぼ似たような内容の感想で笑ってしまった。作者が目指しているところが同じだから感想も重なってくるのだろうと思う。
今回はネタバレ込みの感想になるので、ネタバレNGの方はご遠慮ください。
蛍たちの祈り
- 山間の町で暮らす中学生の坂邑幸恵は、同じく家庭問題を抱える桐生隆之と蛍祭りの夜に出会う。2人はそれぞれが犯した罪を隠し合い、互いの秘密を守る約束を交わす。
- 15年後、妊娠した坂邑幸恵は恋人に裏切られ故郷へ戻り、桐生隆之と再会。過去の秘密と新たな罪を抱えたまま出産し、息子・正道を残して命を落とす。
- 坂邑幸恵との約束を背負った桐生隆之は、虐待を受ける正道を引き取り養子とし、過去の罪を抱えながら町を離れて育て、次の世代へ物語が引き継がれていく。
感想
町田その子は自分の中で主張したいことをしっかり持っている作家さんなのだと思う。『蛍たちの祈り』のラストで描かれている主張は「ホントそれ! ホントそれやで!」と首がもげるほど共感した。
- 親(毒親)を愛せなかったとしてもOK!
- 子どもは社会で育てていこう。無関心は罪だからね。
特に今回の『蛍たちの祈り』のラストで描かれていた主張「子どもは社会全体で見守り、育てていくべき」というところは、これからの日本のビジョンになっていくと思う……というか思いたい。少子高齢化が加速する中、未来を担う子ども達には幸せに育ってもらって、社会を形成するいっぱしの大人として送り出す必要がある。
それにしても。町田その子の言いたいことは理解できたし、個人的に同意もするけど「小説としてどうか?」と問われたら、出来の良い作品だとは到底思えない。
『52ヘルツのクジラたち』の時にも書いているけど、なんでもかんでも盛り込み過ぎなのだ。そして盛り込み過ぎであるがゆえにリアリティがない。
女性にとって都合の良い王子様キャラのような人物(桐生隆之)がいるのもどうかと思う。少女漫画だったり若年層が読むことを想定したラノベならアリだと思うのだけど、人間というのは聖人君子ではいられない。重いテーマを扱っているのに物語のあしらい方が激甘なのが残念過ぎる。
私の好みの作風ではないものの、「大人だけど甘めの小説が読みたい」というタイプの人には刺さる作品だとは思った。


