作品にも作者にも全く前知識の無い状態で借りた1冊。図書館の新刊コーナーにあったのだけど、題名に惹かれて手に取った。
「聖なる怪物」ってフレーズは魅力的だ。人間離れした才能溢れる人のイメージ。
実際、オペラ歌手マリア・カラスの伝記には「聖なる怪物」と言う言葉がかぶしてあったり、バレリーナのギエムも『聖なる怪物たち』と言う題名の作品を発表している。
しかし、この作品の内容はまったく別方向だった。
聖なる怪物たち
経営難に苦しむ総合病院に、ある夜、「飛びこみ出産」の妊婦がやってきた。当直の外科医・健吾の手術のかいなく妊婦は急死。
身元のわからない新生児が病院に残された。直後、健吾の周りで不可解な出来事が続発、彼は病院を辞める事になる。
妊婦は何者なのか?新生児は誰の子か?様々な疑問を抱える健吾は、ひとつの“真相”にいきあたるが…。
アマゾンより引用
感想
外科医として働く主人公が飛び込み出産の患者の出産に立ち会って男の子を取り上げるも母親は死亡するところから物語が転がっていく。
医療の現場の過酷な描写があったり、病院経営の苦悩が書かれていたり、不妊治療から、私立学園の経営者の話までとにかくエッセンスが盛りだくさんに詰め込まれていて、とっ散らかった印象を受けた。
ミステリーに詳しくないのでイマイチよく分からないのだけど、視点がコロコロ変わったりするのはミステリーではよくある手法なのだろうか?
純文学系の作品でも主人公以外の心情が描かれる事はあるけれど「ちょ? この作品主人公は誰なの?」と思うほど、切々と描かれる事はあまりない。
この作品の場合、最初に出てきた外科医が主人公って事だと思うのだけど、途中誰が主人公なのか分からなくなり、また最後に主人公な戻ってきた……って感じ。
だからって群像劇って訳でもないあたりがどうにも微妙。
読後に調べてみたのだけれどテレビドラマになっていたらしい。
ドラマありきの小説だったのか、小説のドラマ化だったのかはよく分からないけれど、ドラマは視聴も評判もパッっとしなかったとのこと。
確かにしっかりした芯のない作品なのでドラマ化してもイマイチかも知れない。
題名の『聖なる怪物』と言うのは医者だの教育者だのは「聖職者」と呼ばれるけれど、そんな彼らの中にある「怪物」がテーマだってことらしい。
……とは言うものの怪物と言うほどおどろおどろしい話でもなくて、せいぜい「俗物」程度の印象。
登場人物達はそれぞれ身勝手なのだけど「超」がつくほどの悪人は1人もいなかった。完全に題名負けだ。
読みやすい文章でサクサク読み飛ばす事が出来たけど、どこにも共感出来なかったし、最初から最後まで残念な作品だった。