第166回芥川賞候補作の『我が友、スミス』がめちゃくちゃ面白くて気に入ったのに、石田夏穂の作品はそれっきり読まずにここまできてしまった。
『冷ややかな悪魔』は「100min.NOVELLA」と言って「100分で読める」がコンセプトのシーリーズとのこと。実際、アッと言う間に読めるので気楽に本を読みたい時にはもってこいだと思う。
冷ややかな悪魔
ザックリとこんな内容
- 主人公有田ユカリは一年中海外を飛び回る商社勤務のOL。ある日、本社に呼び出され「出張禁止」を言い渡される。理由は体脂肪率が高すぎて“万が一”が怖いという、会社の新ルールによるもの。
- 出張禁止を解除するため、ユカリは体脂肪率を下げようとジムに通い始め、体づくりと自己管理に苦闘する。
- 体脂肪率の改善が見えてきた矢先、ある“もの”を拾う出来事が彼女を巻き込む。
- ある“もの”をきっかけに、ユカリの生活と心の内は少しずつ変化して……
感想
『冷ややかな悪魔』を一言で説明するなら働く独身女性が主人公のコメディ作品ってところだろうか。『我が友スミス』と同じく筋トレ小説でもある。
それにしても石田夏穂は筋トレが大好きなんだろうなぁ。彼女の描く筋トレの様子やとリーニングジムでのやり取りは生き生きとしていてリアル感がある。
そして今回は筋トレ要素だけでなく「女性の生き方」のような問題も突っ込んできていた。未婚女性に対して「付き合っている人はいるの?」「結婚しないの?」みたいなアレである。私自身り結婚が遅かったのでユカリの感じた苛立ちはよく分かる。
全編面白かった…のはそうなのだけどテーマを2つ突っ込んできたことで、どっちつかずになってしまった印象を受けた。ラストも唐突な投げっぱなしで気持ち悪い感じ。(読者にはその後の展開が理解でるきようにしてあったけど)
それにドタバタを引き起こした「あるもの」に対してのユカリの動きが行き当たりばったりなのも気になった。一流商社に務めるバリキャリ…って設定なのにあまりにも短絡的過ぎて。コメディ小説ってことで気にしちゃいけないところなのかも知れないけれど。
面白く読んだものの好きにはなれないタイプの作品だった。どうせなら次はもっと筋トレに吹っ切った作品を読みたいと思った。
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