読んだ本の『50音別作家一覧』はこちらから>>

ダンス 竹中優子 新潮社

記事内に広告が含まれています。

『ダンス』は第172回芥川賞候補作。2人の女性が絡み合って踊っている(と思われる)表紙絵に惹かれて手に取った。

題名は『ダンス』ではあるけれど、ダンスがテーマの小説ではなくて、どちらかと言うとお仕事小説…と言うか会社小説…って感じのノリだった。ここ10年は「会社」という場所で働く女性が主人公の作品、増えたよなぁ(遠い目)

スポンサーリンク

ダンス

ザックリとこんな内容
  • 「私」は新卒3年目の「私」は。人付き合いが下手で職場で孤立気味だった。
  • 私の先輩である下村さんの頻繁な欠勤に、私は苛立ちを募らせ、彼女の気ままな行動に振り回される日々を送っていた。
  • 下村さんは田中との婚約破棄を経験し、佐藤との複雑な三角関係に悩んでいたのだが…

感想

大変申し訳ないけれど「この作品がどうして芥川賞候補になったんだろう?」と首を傾げてしまった。第167回芥川賞を受賞した『おいしいごはんが食べられますように』の下位互換作品…と言うイメージ。

会社内の人間関係に翻弄される女性像は今後も文学のテーマとしてはアリだと思う。昔と違って、女性も生涯働き続けることがスタンダードになりつつあるけれど、だからって男女が同じように働いているかと言うとそうでもない。まだまだ過渡期の今だからこそ書くべきネタは山ほど出てくるだろう。

…とは言うものの。似たようなテーマは正直いらないのだ。「ちょっと変な同僚に振り回される主人公」はテーマこそ違えど『おいしいごはんが食べられますように』と変わらない。どうして短期間で似たよう印象の作品が芥川賞の候補になったか、私には理解できない。

そして、ちょっぴり引っ掛かったのは「ビンタする」と言う言葉が何度となく登場すること。「ビンタ」だなんて、なんかちょっと古臭くないですか? 昭和や平成の作品なら分かるのだけど、いまは令和だぞ。底辺層を描いた作品ならギリギリありだと思うのだけど一般企業で働く若者像としてはそぐわないように思った。

昭和って時代に育った人間の感覚だと「ビンタ」は馴染のある言葉かも知れないけれど、今の若者は「人生で1度も人を殴ったことがない」って人の方が多いのだ。子ども時代からの教育風土が昭和のそれとは全く違う。

『ダンス』で描かれている「会社の姿」は令和の若者を描いているはずなのに妙に古臭い気がした。作者の竹中優子は1982年生まれとのことなので、自分の育って時代をベースに描いちゃったのかも知れないな…と思った。

芥川賞候補…ってことで期待して手に取ったものの期待外れの作品だった。

50音別作家一覧はこちら

作家名・作品名等で検索出来ます
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました