吉田修一、凄いわ! 『国宝』めちゃくちゃ面白かった。久しぶりに骨のある大河小説を読ませてもらって大満足。2025年はまだ5ヶ月しか経っていないけれど2、ワタシ的2025年ナンバー1作品になりそうな予感。
『国宝』は映画化されて2025年6月に公開とのこと。実は映画の予告編を観て「ナニコレ? めちゃくちゃ面白そうなんだけど? 吉田修一原作? 読まねば(使命感)」みたいな流れから手に取った。
はぁ~これは映画も楽しみですよ。映画化もされるとのことなので今回の感想はすべて語りたいのをグッと抑えてネタバレ抜き。なのでどこまで感動を書き切れるかが難しいところではある。
国宝(上下)
- 長崎の老舗料亭で任侠の一門に生まれた喜久雄はヤクザ間の抗争で父を亡くした後上方歌舞伎の名門、丹波屋に引き取られ芸の道へと進む。
- 喜久雄は引き取られた丹波屋の御曹司の俊介と出会う。喜久雄と俊介は生い立ちや才能が異なるものの互いに切磋琢磨しながら芸を磨いていくのだが…
感想
はぁぁ。とりあえず設定からしてエモいわ。歌舞伎の家のサラブレッドと野良犬みたいな子(しかもヤクザの息子)が切磋琢磨しながら頂点を目指すとか! とりあえず『ガラスの仮面』とか『巨人の星』とか好きな昭和の人間は全員大好きな設定だと思う。
喜久雄も俊介も歌舞伎に一途で良い子達なのが良かった。2人もそれぞれ欠点はありつつも「歌舞伎が好き」「自分の芸を高めたい」って気持ちが熱くて、熱血スポ根漫画のようなノリさえ感じられてとても良かった。
単純に「芸道を極める」ってだけの物語ではなく歌舞伎と芸能界、そして世間の流行りなどが書かれているのが良かった。暴力団の抗争とか「芸能人女遊びをするのが当たり前」みたいな価値観が変わっていく流れとか、世の中の風潮なども丁寧に描かれている。
そして歌舞伎の舞台に立つ男達の後ろに控えていた女達の活躍もしっかり描写されているあたり、物語に深みを与えていたと思う。俊介の母の幸子にしても、俊介の妻の春江、喜久雄の妻の彰子にしても「梨園の嫁」として夫を支える様はなかなか迫力があって「男よりずっと肝が座っているな」と感じさせられた。
この感想を書いている時点では映画は未公開なので「喜久雄と俊介のどちらが丹波屋の名跡を継ぐのか?」とか「どちらがより高みへと登り詰めるのか?」については、触れずにいようと思う。気になった方はご自身で確認して戴きたい。
『国宝』は歌舞伎だけでなく舞台芸術が好きな人ならより楽しめるとは思うのだけど、そうでなくても楽しめる作品だと思う。と言うのも、とにかく展開が早くて「これでもか!」と言うほど次々と事件(困難)が押し寄せてくる。もともとは新聞小説だったそうなので、読者が飽きないようにテンポ良く物語が進むよう書かれているのかも知れない。
歌舞伎が大好きな2人の少年が様々な経験をして大人になって…結婚して…そして迎える壮絶なラストシーン。とにかく凄くてイッキ読み。
今は映画の公開が楽しみでならない。吉田修一の『国宝』の世界をどこまで表現してくれるのか? そして壮大な物語をどこまで書くのか? 途中まで映画化して「俺達の戦いはこれからだ」的なラストになるのか? 劇場まで足を運び、自分の目で確認したいと思っている。