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アンジュと頭獅王  吉田修一 小学館

『アンジュと頭獅王』をひと言で説明すると吉田修一版『山椒大夫』って感じ。

『山椒大夫』はご存知、森鴎外の名作文学たけど、最初から最後まで森鴎外が考えて書いたのではなく、ベースは中世に成立した説経節『さんせう太夫』だと言われている。

『さんせう太夫』浄瑠璃などの演目で演じられていて、森鴎外が文学作品として夜に送り出した訳だけど、森鴎外版の『山椒大夫』意外にも、子ども向けの童話としても発売されているし、アニメ映画にもなっている。

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『安寿と厨子王』の物語は好き嫌いがキッパリと別れるのではないかと思う。

一応「めでたしめでたし」で終わっているけれど、姉の安寿は弟を守るために拷問を受けるわ、弟を逃がすために16歳で自殺していて本当の意味でのハッピーエンドとは言い難い。

『アンジュと頭獅王』は吉田修一の創作だけど、ベースの物語はキッチリ追っているので『安寿と厨子王』の物語が苦手な人にはオススメしない。

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アンジュと頭獅王

ザックリとこんな内容
  • 吉田修一の描く二十一世紀版『山椒大夫』の世界
  • 安寿と厨子王が1000年の時を越えて繰り広げる物語
  • 実験小説でもあり、プロが本気で書いた二次創作小説とも思える作品

感想

数年前に『声に出して読みたい日本語』って本が流行ったけれど、『アンジュと頭獅王』は読んでいてとても心地よい日本語で書かれている。声に出して読んでも良いと思う。

冒頭の一部を少しだけ紹介したい。

あらいたわしや、幼少の姫と若を連れ立ちまして伊達の郡信夫の庄へ流浪の身となられた御台所のお嘆きは慰めようがございません。

そんなある日のこと、いずことも知らないで、庭に舞い降りてきた夫婦の燕が、長押の上に巣を作り、十二の卵を慈しむように育てておりました。

『アンジュと頭獅王』より引用

古典…と言うよりも完璧に時代劇のナレーションだと思う。耳触りが良くて日本人の脳によく馴染む感じ。

そして肝心の物語は私達の知っている『安寿と厨子王』『山椒大夫』と大筋は同じ。ファンタジー設定なので1000年の時を越えていく分私達の知っている物語よりも酷いとも言える。

アンジュは安寿はちゃんと(?)拷問に合うし、酷い目にあっている。そして頭獅王(厨子王)は色々な人から支えられて幸せを掴む。

賛否はあると思うのだけど私は楽しませてもらったし、なんだかんだ言って面白かった。

「俺の考えた最強の『安寿と厨子王』を読ませてやっからな!」的な感じが特に。

ただ本格的な小説が読みたい人には物足りないと思うし。あくまでも『安寿と厨子王』『山椒大夫』の二次創作小説…オマージュとして楽しむことをオススメする。

ベースの物語が好きで、気軽に楽しみたいという方は読んでみてもいいんじゃないかな…と思う。

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