読んだ本の『50音別作家一覧』はこちらから>>

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 汐見夏衛 スターツ出版文庫

記事内に広告が含まれています。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』はこの夏(2024年)に映画化された作品。公開された映画が巷で酷評されいたので「そんなに酷い映画の原作なら読んでみたいな」と怖いもの読みたさで手に取った。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は「あの花シリーズ」と呼ばれていてるシリーズの1つとのことで、そう言えば書店にいくと似たような題名の作品がめちゃくちゃ綺麗なイラストの表紙で平積みされている。

あの花シリーズの本は「号泣必死」とかいう触れ込みで「なんか知らんけど恋愛物。どっちかが死ぬか記憶を失うかする話」だと認識していて、今まで1度たりとも読みたいとは思わなかった。だけど、よくよく考えてみると読まずに毛嫌いするのは失礼な話だ。

……って訳で読んでみた。

今回は盛大にネタバレしつつの感想なのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

スポンサーリンク

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

ザックリとこんな内容
  • 親や学校、すべてにイライラした毎日を送る中2の百合は母親とケンカをして家を飛び出す。
  • 百合が目をさますとそこは70年前…第二次世界大戦中の日本だった。
  • 百合は偶然通りかかった彰に助けられ、彼と過ごす日々の中てせ彰の誠実さと優しさに惹かれていく。
  • しかし彰は特攻隊員として命を懸け戦地に飛び立つ運命だった。

感想

結論から書くけれど巷で酷評されているほどには悪くないと思った。ラノベ…とは言わないまでもヤングアダルト層をターゲットにして読ませる小説とするならアリだと思う。ただし大人が読んで面白いとまでは言わない。

なお。私自身は面白いと思わなかったし好きなれなかったけれど「まぁ、わかる」くらいの説得力はあった。

私が『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』を好きになれなかったのはヒロインの気持ちに寄り添えなかったから。

だってヒロイン頭が悪過ぎるんだもの。

「若いから仕方がない」なんてレベルじゃなくて普通に馬鹿。とは言うものの「普段、本を読まない若い人に共感してもらたいたい」と言う意味でのヒロイン設定とするならば、むしろ良かったのだろうな…とも思った。

ヒロインはシングルマザーの母親と2人暮らしをしている14歳。絶賛反抗期中。「勉強なんかくだらない」と勉強しないタイプ。母親と喧嘩して家を飛び出したことで戦時中にタイムスリップする。

ヒロインはタイムスリップ先で特攻隊の若者と出会って恋に堕ちる訳だけど、戦時中の体験を通して戦争の悲惨さを知り、いかに自分が恵まれた生活を送っていたかに気付いていく。物語を通してヒロインはしっかり成長していて成長小説としては十分に楽しめると思う。

ただ残念なのはヒロインの頭が悪過ぎる…ってところだ。

ヒロインは戦時中にタイムスリップしたことを理解しているはずなのに「日本なんて負けちゃえばいいんだ」とか「戦争なんて馬鹿げている」って事を公言して特高に目を付けられて大事な人達を窮地に立たせている。

このヒロイン。1度の失敗なら分かるんだけど何度も失言しちゃうタイプ。「私は間違ってない」と言うのだけど「いやいや。間違ってないのは分かるけど、周囲にめちゃくちゃ迷惑かけてますやん?」と突っ込まずにはいられないレベル。

ヒロインの設定がタイプスリップした中学生であったとしても、第二次世界大戦中の日本の情勢なんて中学生でも知っている。歴史が嫌いであったとしてもドラマとか漫画とかある訳で「まったく知りませんでした」だなんて、あまりにも馬鹿過ぎる。仮に本当に何も知らなかったとしても1度失敗したら「空気読めよ」って話だ。

ヒロインの言動には最初から最後までイライラさせられっぱなしだった。

それはさておき。恋愛以外の予想していたより丁寧に描かれていたのは好印象。空襲で親が死んで1人ぼっちになってしまった子どもがいたり、特攻隊の隊員に色々な人がいる…ってことをしっかり描いたていたり。出撃前に「死にたくない」と逃げ出す隊員がいたり。それらを目の当たりにする中でヒロインは確実に変わっていった。

最後まで読んでみて思ったのだけど私がヒロインを好きなれなかったのは「ヒロインが馬鹿過ぎる」って事だけじゃないような気がした。

もしかすると…だけど『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の表紙絵に描かれた少女とヒロインの醸し出す雰囲気が一致していたら素直に物語を受け入れることが出来たかも知れない。

表紙の少女は純情可憐で真面目そうで何なら地味に本でも読んでいて思慮深そうな雰囲気なのだ。表紙絵の少女は頭が良くて聡明そうに見えてしまう。

もしも表紙絵に描かれた少女が髪染めていてスカート短くて、胸元もだらしなくボタンが外されていて、中学生なのにメイクバチバチにキメて、勉強なんかしたことのなさそうな頭の悪そうなヤンキー風の少女だったら、ヒロインの馬鹿過ぎる言動も「そりゃそうだな」とか「ヤンキーにそこまで求めても無理だな。むしろ成長しただけ偉い」と受け入れていた気がする。

私は全く楽しむことができなかった作品だけど「本を読むのが苦手な若い人」が作品を読んで欲しいターゲットだとするなら『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は良い作品だと思った。

50音別作家一覧はこちら

作家名・作品名等で検索出来ます
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク