先日、書店で『青い壺』が平積みにされているのを見つけた。再ブレイクしたらしい。
私は有吉佐和子フリークで有吉佐和子の書いた小説はほぼ読んでいるし『青い壺』も持っているけど、実のところ私が読んだ有吉佐和子作品の中で1番ツマラナイと思ったのが『青い壺』だった。なので、あらすじも覚えていなかった。
私が初めて『青い壺』を読んだのは10代後半か20代前半。「もしかしたら50代に突入した今、読んだら面白いのかも?」と思って再読したみた。
面白かった!
確かにこれは10代で読んでも面白くないだろう作品。この年になって有吉佐和子作品と改めて向きあうなんて思ってもみなかった。
青い壺
- 無名の陶芸家が生み出した美しい青磁の壺にまつわる物語。
- 偶然焼かれた青磁の壺は陶芸家の意図せぬ形で売られ盗まれてしまう
- 定年退職後の虚無を味わう夫婦、戦前の上流社会を懐かしむ老婆、45年ぶりにスペインに帰郷する修道女、観察眼に自信を持つ美術評論家など青い壺は次々と持ち主を変えて旅を続けるのだが…
感想
『青い壺』は青磁の壺をめぐる連作短編作品。1つの物を介しての連作短編方式はありがちなので珍しくはない。さらに言うなら時代背景が古いので、現代の物の考え方とズレている部分が多かった。
それなのに『青い壺』は面白かった。感覚のズレは否定できないものの人間…特に女性の感じる普遍的な部分が鮮やかに描かれていて面白かったし「ちょっと昔の日本」を知ると言う意味でも興味深いものがあった。
- 舅姑に仕える昔風の女
- 定年退職した夫をもて余す女
- 独身で親の面倒をみる女
- 日々老いを感じる女
私は10代後半から20代前半で『青い壺』を読んだのだけど、その当時に読んでもこの作品の面白さは分からなくて当然だと思う。当時の私は何だかんだ言って若くて元気で希望に溢れて世の中を知らない小娘だったので『青い壺』の登場人物達の気持ちは1ミリも理解できなかったのだ。
それが30年後に読んでみると『青い壺』の登場人物達の気持ちが手に取るように理解できるのだ。自分とは違うタイプの女もいたけれど「あ~こういうタイプの人っているよねぇ~」と思いながら読んでいた。
個人的に刺さったのは独身で母親を引き取る女の話。母親は主人公の家に引き取られた後、白内障の手術を受けている。私自身は既婚者だけど、結婚も遅かったし、そもそもとして自分が結婚するとは思っていなかったので「独身で親の面倒をみる」って覚悟は出来ていた。
さらに言うなら独身時代に親の入院だの手術だのには散々付き合っていたので、主人公の心の動きや母親の言動には「分かる~分かり過ぎる~」みたいな気持ちにっなて読んでいた。
古い小説なのに現実味があるって凄いな!
自分自身はまだ通っていない道だけど、高齢女性が主人公の作品など「あ…コレはうちの実母(義母)と同じだわ!」と思うような部分が多くて感心してしまった。時代が変わっても女の普遍的な部分は変わらないのだ。
有吉佐和子…凄い…凄過ぎる。
『青い壺』を再読して有吉佐和子の凄さを再確認した。実に良い読書体験だった。