前回読んだ本屋大賞受賞作の『流浪の月』が好みだったので、続けて新作を読んでみたい。
凪良ゆう…たぶんだけど、数年のうちに直木賞を取る気がする。今の日本の風潮にフィットした作品を売れ筋バランスで書き上げる職人作家さん…って感じ。「職人作家」って言うのは貶しているのではなくて、むしろ褒めている。
『流浪の月』の時も思ったけれど『汝、星のごとく』もリリカルな感じで映像化向きの作品。映画化しそうな予感。
汝、星のごとく
- 風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
- 毒親に育てられ、孤独と欠落を抱えた2人はいつしか恋人同士となる。
- 櫂は高校卒業と同時に漫画原作者としてデビューして上京。遠距離恋愛の中で2人の心はすれ違っていくのだが…
感想
『汝、星のごとく』のテーマはズバリ「毒親と恋愛」。なかなか今風なテーマだと思う。毒親…と言っても、かつて姫野カオルコが描いたタイプの毒親ではなく『汝、星のごとく』に登場する毒親はヤングケアラー的な要素を含んでいる。
- 暁海の母→夫の浮気が起爆剤となり精神を病んだ人
- 櫂の母→男無しでは生きられないスナック経営のシングルマザー
多少の不満はあっても「普通くらいの家庭」で育つ人と違って、毒親育ちの子ども達は「親」と言う重荷を背負って生きていくことになる。普通の人達は「親なんて捨てちゃえばいいんだ」と言うけれど、真面目な性格の子ども達にはなかなかそれが出来ないのだ。
私自身、今にして思えばヤングケアラーで中学生の頃には一般的な主婦がやることはたいていやっていたし、弟のお弁当どころか高校の入学手続きや説明会も私が行っていた。結婚相手に望む条件は「実家の近くに住んでくれる人」と言う、なかなかのヤングケアラーっぷり。
もし私の近くに当時の私がいたら公的な支援を受ける方法を教えたり「家族よりも自分の生き方を優先しなさい」と言うに違いない。
閉鎖的な島で暮らす暁海と櫂はいつしか惹かれあい恋人となる。2人の間には常に「親」と言う重たい荷物がって、常に親に振り回される。傍で見ていると「親なんて放っておいて自分の幸せを考えなよ?」と思うのだけど、彼らにはそれができない。その感覚が私には分かり過ぎた。
私には共感できる作品だったし物語自体もスピード感があってイッキ読み出来る面白さだったのだけど「ドラマティックにするために盛り過ぎじゃないの?」とは思った。
あと北原先生の人物設定があまりにもご都合主義的と言うか現実味が無かったな…と。いくらなんでも暁海にとって都合の良過ぎる男だったし、なんかこう…少女漫画ちっくで胸焼けしてしまった。
…とは言うものの最後から最後までイッキ読みできる勢いのある作品だった。凪良ゆうはそう遠くない日に直木賞を取るだろうと予言しておく。