朝比奈あすかは初挑戦の作家さん。
題名だけ見て「素敵な美少女が出てくる青春小説に違いない」と、勝手なイメージでもって手にとったのだけど、実際は「産み分けで女の子を産みたい」いうテーマの表題作と、他4編が収録された作品集だった。
憧れの女の子
「次は女の子を産むわ」。そう宣言して産み分けに躍起になる妻。そんな妻の決断にうっすらとした違和感を抱く夫。
互いに心揺れる日々を経て、その果てに夫婦が得たものとは――(表題作)。
男女の日常に生じたさざ波から見える、人間の愛おしさやつよさ。「心にしみる人間賛歌!」と王様のブランチでも絶賛された傑作短編集。
アマゾンより引用
感想
物語の作り方から、人物の描写まで驚くほどリアルに描かれている。
小説を読んでいると言うよりも、むしろご近所さんの噂話を聞いているような、実録系のドラマを見ているような印象。
どの作品もそのまま2時間ドラマにしても通用すると思う。特に大人の女性の描き方が上手い。上手過ぎると言ってもいい。
池井戸潤の女性版って感じ。現代に生きる人々を上手に描いていると思う。
感心して読んだのだけど、好き嫌いを問われると微妙なところ。と言うのも、確かに話は面白いのだけれど、2ちゃんねるのまとめブログを読んでいるような感じで「ネタはいいんだけどな」ってところを抜け切れていない気がした。
小説として読むには、いささか物足りない。いっそ「これはこれ」として読むのもアリだとは思うけれど、どの作品も池井戸潤的な爽快感が無い。
すっごく上手い人だと思うのだけど色々な意味で突き抜けていないように思う。地味職人系でもなければ、エンタメ寄りでもない。痒いところに手が届かない感があって、残念に
思う。
でも、機会があれば他の作品も読んでみたいと思う。もし路線の違う作品があれば是非読んでみたいと思わせてくれる作品だった。