今春(2023年4月)に村上春樹の新作長編小説が発売されると聞いて「久しぶりに村上春樹を読んでみるか」と思い立ち、なんとなく未読だった『神の子ども達はみな踊る』を読んでみた。
そもそも私は村上春樹ファンではないけれど、なんかこぅ…出版業界が低迷している昨今、新作が出て祭りになるのは村上春樹くらいのものなので、読書好きと言うからには村上春樹は押さえておきたいところ。
今回は新作を読む前の復習…ってところ。
神の子どもたちはみな踊る
- 1995年1月17日、地震(阪神淡路大震災)はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。
- 、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる。
- 阪神淡路大震災を経験した人々をテーマにした6編からなる短編集。
感想
あれ…なんか思ってたより面白くないんだけど、これは一体どうしたことか?
確かに村上春樹らしい短編集だったとは思うのだけど「面白いかどうか?」と聞かれたら「面白くなかった」としか言えない。
『神の子ども達はみな踊る』は阪神淡路大震災がテーマだけど、阪神淡路大震災は1995年の震災。その後、2011に東日本大震災が起こり「震災文学」とも言えるレベルで震災を経験した人達を描いた多数の小説が発表された。震災文学の中には面白いものもあれは、そうでない物もあったけれど、数ある震災文学の中に『神の子ども達はみな踊る』を放り込んでみると「まあまあくらい」としか言いえない気がする。
収録作品の中で『かえるくん、東京を救う』と『蜂蜜パイ』については、村上春樹らしさが全面に出ていて「村上春樹ファンならハマるな」とは思ったけれど、逆に言うとそれらは村上春樹らしい作品と言えるものの「阪神淡路大震災に被せる必要はなかったのでは?」と言う気持ちになってしまった。
私は阪神淡路大震災のときに直接的な被害を受けていないけれど、兵庫県と大阪府は隣同士…ってこともあって、被災者をリアルに知っていた分だけ阪神淡路大震災について強い思いを持っている分、点数が厳しくなってしまったのだと思う。
実際に被災しなかったとしても連日TVで震災の映像が流れたこともあって、漠然とした不安を感じたに日本人は多かったと思う。村上春樹は「漠然とした不安を感じた日本人を描いたんですよ」と言えば、そうなのかも知れないけれど、なんかこぅ…浅い気がした。
すごく意地悪な言い方になってしまうけれど「村上春樹は大地震があろうが、たくんさの人が死のうが、自分と向き合って美味しいお酒飲んで、音楽聞いて、セックスを楽しめる人なんだな」っと思ってしまった。
世界に何が起こっても自分の中に「核」を持っている人は強いと思うのだけど、テーマがテーマなだけに私にはそのノリは受け入れ難かった。
たぶん…だけど。私は村上春樹の短編とは相性が良くない気がする。せっかく読むなら長編小説。なんか気に食わない事があっても力技でねじ伏せていく独特のスタイルなら「村上春樹だから仕方ないな」と思えるのだけど、短編だとそんな風には思えないのだ
とりあえず新作長編小説に期待したい。