『劇場版「きのう何食べた?」』は、よしながふみの漫画『きのう何食べた?』のTVドラマから派生した劇場版映画。
私はもともと漫画版の『きのう何食べた?』が大好きで、TVドラマ版も履修済。映画についてはコロナ突入後の公開だったため、なんとなく今まで観ないまま来てしまったのだけどアマゾンプライムで公開されていたので視聴してみた。
『劇場版「きのう何食べた?」』は公開当時、ケンジを演じた内野聖陽が「夜中にひっそりやる話だと思っていたのが、劇場の大スクリーンに映し出される気恥ずかしさもありますけど」と発言したことで炎上していたけれど、私は原作大好き人間なので「それでも観ておかねば」と言う気持ちが強くて、迷うことなく視聴した。
劇場版『きのう何食べた?』
映画:劇場版 きのう何食べた? | |
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原作 | よしながふみ |
監督 | 中江和仁 |
脚本 | 安達奈緒子 |
音楽 | 澤田かおり |
出演者 | 西島秀俊 内野聖陽 山本耕史 志賀廣太郎 梶芽衣子 |
封切日 | 2021年11月3日 |
あらすじ
「シロさん」こと筧史朗と「ケンジ」こと矢吹賢二の2人は、史朗の部屋で同棲するカップル。ゲイであることを隠しながら弁護士として働く史朗は慎ましいストイック気味の倹約家だが、きりっとした男前の見掛けによらず優柔不断な一面も持っていた。
史朗は将来に備えた家計管理の一つとして2人分の食費を月2万5千円(後に3万円)に収める事を目標にしながらも、仕事は最小限に定時で切り上げてまで2人の食事をつくることに喜びを感じている。
一方、やゲイであることを隠さず美容師として働く賢二は自分の「愛」に一途なロマンティストたが、優しそうな見た目に反して厳しい一面も持っている。
史朗 と賢二にとって食卓を挟みながら取る夕食の時間は日々の出来事や想いを語り合う大切なひとときだった。
ある日、史朗の提案で、賢二の 誕生日プレゼントとして「京都旅行」に 行くことになる。しかし、この京都旅行をきっかけに、二人はお互いに心の内を明かすことができなくなってしまう。
そんな中、史朗が残業を終え商店街を歩いていると、賢二を目撃する。その横には見知らぬ若いイケメンの青年の姿があった。
お互いの価値観の違いやゲイ・カップルである事ゆえの葛藤と向き合いながら、2人で一緒にいることの意味を確かめ合って絆を深める。
内野聖陽の炎上発言
さて。映画感想の前に嫌なところから押さえておきたい。
炎上騒動は内野聖陽が映画公開前に「夜中にひっそりやる話だと思っていたのが、劇場の大スクリーンに映し出される気恥ずかしさもありますけど」と発言したことがキッカケだった。「同性愛カップルは世間の目を避けて生きろって意味なのか?」等、炎上してしまった訳だけど、私も「それを言っちゃあ駄目でしょう?」と思った派だ。
「まぁ…そうは言ってもノンケ男性からすると同性愛役は難しかったのでは?」って話ではあるのだけれど、内野聖陽はドラマクランクアップの時にも「男に戻ります」と発言して「ケンジは男なのに、男に戻りますとはどういう意味なのか?」と炎上している。前回の炎上発言からまったく成長していないのは流石にアウトだよなぁ…って話。
実際、内野聖陽が演じたケンジは「ゲイの男性」と言うよりも昔のイメージの「オカマ」って感じのキャラになっていて原作漫画のケンジのイメージからは微妙にズレている。TVドラマ版の時も気になったけれど、映画版はそのズレが拡大しているように思った。
LGBT問題云々を横においても「自分が演じる役の研究が出来ていない」ってところは役者としてどうなのかな…と。
内野聖陽だけが駄目なのではなくて『きのう何食べた?』TVドラマ版にしても映画版にしても「今の流行りに乗っかりました」みたいな感じで映像化されちゃったんだろうな…と思ってしまった。
繋がりながら生きている
『きのう何食べた?』はゲイカップルの日常…と言ってしまえばそうなのだけど「人と人との繋がりを描いた作品」と言う見方もできると思う。
シローとの家族、ケンジの家族との付き合い方もそうだし、シローとケンジの共通の知り合い、冨永一家との繋がりや、小日向&ジルベールカップルとの「家族ぐるみのお付き合い」もそうだ。
人は1人で生きていくことは出来ないので、血縁関係だったり血縁ではないけれど知己とと繋がりながら生きている。
シローとケンジはゲイカップルであるがゆえに「結婚」という制度の枠外にいるので、一般的な夫婦と違った悩みがあるけれど「ともに生きていく」という意思のもと、互いの考えをすり合わせていく感じは一般的な夫婦と同じだと感じた。
朗らかな音楽と共に…
私。『きのう何食べた?』はTVドラマとして観ている時から「これは好き過ぎてたまらない」と思うところがあった。
それはシローが買い物に行くローカルスーパー「ナカムラヤ」のテーマソング。(ナカムラヤは漫画原作ではタカラヤと表記されている)
このナカムラヤのテーマ…控えめに言って最高過ぎる。1度聞いたら覚えてしまうし、うっかり口ずさんでしまうレベル。
この曲を聞くと、なんだか朗らかに気持ちになってしまうから不思議だ。
ナカムラヤのテーマ以外にも『きのう何食べた?』はホームコメディとしての名曲が多い。ドラマや映画って音楽が占めるウェイトって大きいよなぁ…としみじみ。
勢いあまってピアノの楽譜を購入してしまったほどに『きのう何食べた?』の音楽は気に入ってしまった。
食べることは生きること
さて『きのう何食べた?』は料理映画としても楽しめる…と言うか、そもそもが料理漫画なのだもの当たり前と言えば当たり前。
料理がテーマになった日本の映像作品と言うと最近では『孤独のグルメ』とか『深夜食堂』を思い浮かべるけれど『きのう何食べた?』が他の料理物と一線を画するのは家庭料理がテーマになっている…ってところ。
シローは料理好きな男ではあるけれど意識高い系ではなくローカルスーパーの「ナカムラヤ」で買い物をして、節約と低カロリーを心掛けている。「低カロリー」と言っても、たまにはハメを外した料理も作るあたり「普通の人」って感じがして好感が持てる。
人間、日々の暮らしの中ではままならない事があったり、嫌なことがあったりするけれど、家族で食卓を囲めばたやすく幸せになってしまうものだ。
シローとケンジの2人が食卓に向かい合って幸せに暮らしている情景こそが『きのう何食べた?』において最も大事なところだと思う。
劇場版『きのう何食べた?』は贔屓目にも「最高の作品だった」とは言えないけれど、気楽に楽しめる食べ物映画だと思う。