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彼女の家計簿 原田ひ香 光文社文庫

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薄々気がついてたけれど、私は原田ひ香の作品と相性が悪い気がする。『彼女の家計簿』は巷の評判が良さげだったので読んでみたものの、私はまったく楽しめなかった。

家計を切り盛りする人間なら誰もがちょっびり気になってしまう「家計簿」を巡る物語と言うことで「読まねば!」って気持ちになってしまったのだけど、そもそも『彼女の家計簿』の本質は家計簿云々ではなかった。

今回は盛大なネタバレ込みの感想になるのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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彼女の家計簿

ザックリとこんな内容
  • 失業中のシングルマザーの里里の元へ、疎遠になっている母親からぶ厚い封筒が届いた。
  • 封筒の中身は五十鈴加寿という女性が戦前からつけていたという家計簿だった。
  • 加寿は里里の祖母にあたる女性で、男と駆け落ち自殺したと聞かされていた。
  • 妻、母、娘。転機を迎えた三世代の女たちが家計簿に導かれて繋がっていく。

感想

1冊の家計簿を読み解くことで戦中戦後を生きた1人の女性像を浮かび上がらせる…みたいな流れの物語なのだけど、いかんせんヒロインが多過ぎてとっ散らかった話に仕上がっている。

一応、メインヒロインは現代に生きるシングルマザーの里里と家計簿を書いた加寿なのだけど、そこに色々な女が顔を出し、それぞれの生き様やエピソードなどを乗っけてくるので、飽きることなく読める…と家ばそうなのだけど、どのエピソードも薄っぺらい感じになってしまっている。

祖母・母・孫娘の三世代の人生を描く…みたいな話は文学的には「あるるある」な感じで、例えば有吉佐和子の『紀ノ川』なども三世代物なのだけど、名作と呼ばれる三世代物語と『彼女の家計簿』の決定的な違いはボリュームだ。

三世代物語を書きたいなら長編化しないと無理なのでは?

『彼女の家計簿』に登場する女達はそれぞれに自分の言い分や主義主張があって、言わんとする事は理解出来るのだけど、そこに至る過程や気持ちの変遷を丁寧に書いていないので、箇条書きを読まされているような気持ちになってしまった。

特にイマイチだったのが「娘を捨てて男と心中した」とされていた加寿の生き様。現代の女性の価値観を持っていたがゆえに不幸に飲み込まれていくのだけど、それにしてもツッコミどころが多過ぎた。いくら「そんな時代だったんですよ」と言ったところで、加寿の行動は謎が多過ぎるのだ。

さらに言うなら加寿の娘…里里の母親の描写があまりにも酷い。不幸な境遇が人格を歪めてしまった…って解釈なんだろうけど「何らかの障害があるのではないか?」疑うレベルでエキセントリックで人として酷い。

ちなみに。エキセントリックな登場人物は他にもいて人格破綻者の大安売り状態になってしまっていた。1人ならまだ良いけれど、複数出しちゃあ駄目なのでは?

原田ひ香はもういいかな…って気持ちになってしまった。

ただ、原田ひ香の作品は私の好みではない…ってだけで、サクサク読みやすいしハッピーエンドで刺さる人もそこそこいると思うし、ドラマ化とかしやすそうだな…と思った。

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