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終わった人 内館牧子 講談社文庫

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先日読んだ『すぐ死ぬんだから』に続いて内館牧子の老人をテーマにした作品を読んでみることにした。出版年度的には『終わった人』の方が『すぐ死ぬんだから』よりも先にヒットしたみたい。

すぐ死ぬんだから』の主人公が女性だったのに対して『終わった人』の主人公は男性だった。

主人公の性別が違うから…ってこともあるだろうけど、私は断然『すぐ死ぬんだから』の方が面白かったけれど、一般的な評価としては『終わった人』の方が人気っぽい。

今回も軽くネタバレがある感想なのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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終わった人

ザックリとこんな内容
  • 主人公、田代壮介大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた。
  • 仕事一筋だった壮介は退職後の生活をどうしたら良いのか途方に暮れる。
  • 年下でまだ仕事をしている妻は旅行などにも乗り気ではないらしく、ジムに通ってみたり、大学院進学に向けて文学講座を受講したり、ハローワークに行ったりと試行錯誤するのだが、なかなか上手くいかない。
  • そんな中、壮介に大きな転機が訪れて……

感想

『終わった人』は「サラリーマンは定年後どう生きるべきか?」みたいな話なのだけど、主人公がエリートなので庶民感覚で読むのは難しい。「億の資産がある人の気持ちに庶民がどう寄り添えと言うのか?」って話だ。

……とは言うものの、エリートが悪戦苦闘する様はある意味面白い…と言えばそうかも知れない。

「仕事一筋に生きてきた人間が定年後、どう生きるべきなのか?」と言うテーマはエリートも庶民も同じなのだと思う。そして「老いをどう受け入れるのか?」ってところは平等に与えられたテーマだろう。

テーマ自体は良いと思ったけれど話の作りが雑過ぎるが気になった。「小説だから細かいことは気にすんなよ」って話なのだけど、話にリアリティがなさ過ぎた。

ベンチャー企業のイケメン社長が老人の多いジムに通って、老人とランチを楽しむ…とか、ちょっと考え難い。主人公の転機となる大きな出来事はどれもこれも「いやいや。流石にそれは無いでしょ?」としか思えない展開のオンパレード。

それにラストに東日本大震災の復興ボランティアを持ってきて「イイハナシダナー」みたいな雰囲気に仕上げているのが安直だ。東日本大震災以降、日本の文学は何かと震災をテーマにしがちだけど、何でもかんでも震災ネタ突っ込んだらイイハナシダナーって訳じゃないと思うのだ。

『終わった人』はドタバタコメディで映像化するならアリかも知れないけれど、文章だけで楽しませる大人の小説としては弱い気がした。

老後はこれから自分が通る道でもあるので、老後をテーマにした作品には興味があるものの内館牧子の作品はもう読まなくていいかな…と思った作品だった。

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