WEB記事を読んでいて思い出したのだけど、私は人生で1度だけ私立病院の特別室に足を踏み入れたことがある。WEB記事を読むまですっかり忘れていたけれど、なんかこう…貴重な経験だったので記しておきたい。
私が私立病院の特別室…と言っても入院していたのは私ではなく父だった。
当時の私はまだ結婚しておらず、一家の大黒柱的ポジションで働き蜂のように働いた。父は末期の肝硬変で「もう駄目です」と言われ続けながら入院して半年を迎えようとしていた。
父が入院していた病院は私が住んでいる市では5指に入る総合病院。近隣の人が大きな病気をしたりすると、かなりの高確率で行くよね…みたいな位置付けで地元にとって欠かせない病院だった。
当時、我が家はお金に困っていたので当然のように大部屋を利用していた。付き添いをしている母の事を考えると個室の方が良かったのだけど、個室代なんて払えるはずもなかった。
ところがある日、看護師長さんから「申し訳ないんですが病室を移ってください」と言われてしまった。その病室って言うのがそのVIP用の特別室だったのだ。
看護師長の話から推察すると、こういう事情だった。
- ベッドが満員で新規患者が受け入れられない。
- 誰かに特別室に移ってもらえば新規患者を受け入れることができる。
- 差額のベッド代は病院が持つので数日間特別室に移動してください。
特別室は病院の最上階にあってナースステーションから離れている。重症患者を入れる訳にはいかないし、さりとて元気一杯で自力でウロウロするする患者を特別室のあるフロアに入れるのもはばかられる。
その点、父は重症患者ではあったものの、正直「いつ死んじゃってもいいよね」って状況だったし、特にできることもなかったので最適な患者だったのだと思う。加えて患者の家族(私や母)が大人しくて面倒をかけない患者家族だったから…ってところもあったのかも知れない。
そして父はVIP待遇の特別室に移動した。
特別室は同じ病院とは思えないようなクオリティだった。ざっくり言うと、ちょっとしたホテル。ちなみに備品はこんな感じ。
- すっごく良さげなベッド
- 家族用の予備ベッド
- 冷蔵庫
- テレビ
- クローゼット
- ソファーセット
- クローゼット
- 洗面台
- トイレ
- お風呂
まさかいつも使っている病院の最上階にあんな凄い部屋があったとは思ってもおらず、その待遇の良さに驚きを禁じ得なかった。
予備のベッドがあって、自分の部屋にお風呂とトイレがついているのは最高だった。あれくらい整っていたらしばらく暮らしていくことも可能。
「なんなら、ずっと特別室でもいい」と思ったものだけど、当然ながらベッドが空いたら追い出されてしまう訳で、特別室生活はたった2泊で終了した。
政治家とか芸能人って、都合が悪くなると入院するけど、彼らは病院の特別室で「入院」と言う名の加護のもと、のんびり過ごしていたのだろうなぁ。そして私が暮らしている市にも特別室を利用する人がいる…ってことに驚いたものだ。
今でも、あの病院に特別室が設定されているのかどうかは知らないし、私が病院の特別室を利用することはもう無いと思う。
父が入院していた頃は私の人生でも超大変な時期だったけど、今にして思えば特別室を利用出来たのはなかなかの経験だった。