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はつ恋 村山由佳 ポプラ社

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久しぶりにしみじみとする恋愛小説を読んでしまった。『はつ恋』は50代の女性と40代後半の男性の恋愛を描いた作品。

恋愛小説って、どうしても若い人が主人公だったり、大人の恋になると不倫物が定番になりがちだけど『はつ恋』は不倫物ではない。

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はつ恋

ザックリとこんな内容
  • 小説家のハナは2度の離婚を経て、自然豊かな南房総の一軒家で小説を書きながら生活していた。
  • ハナの恋人のトキヲはハナの幼馴染み。一人親方(大工)として働くトキヲは19歳の娘と70代の母親と暮らしていて2人は遠距離恋愛中。
  • 様々な経験を経た中年カップルの恋愛を丁寧に描く。

感想

『はつ恋』中年と呼ばれる世代の人に読んで欲しい。ザッと内容を説明すると

「自然豊かな南房総の一軒家で一人暮らしの女小説家が恋人とイチャイチャする話」

……としか言えない。妄想小説と言えばその通りだし「そんな都合の良い話ってある?」って気持ちにならなくもない。

現実問題として、中年が恋をするとなると色々と縛りが多くて難しい。『はつ恋』の中でも2人の親の介護問題がチラッと登場するものの、ふんわりとしか描かれておらず臭いものにフタをする方式でサラッと流してしまっている。

いつもの私なら「はぁぁぁ?大人のラノベかよ?」と思っただろうけど、今回はうっかり「まぁ…いいか」みたいな気持ちになってしまった。

『はつ恋』のは現実を生きる大人のガチガチな恋愛を描いた作品ではなく「中年だって恋する心は変わらない」てところじゃないかな…って気がする。

説明するのが少し難しいのだけど、歳を重ねるごとに肉体的な若さは消え去ってしまうし、感性だって変わってくる中でだけど、ふと「自分の中身は昔とちっとも変わってないんだけどな…」って思ってしまう、あの感覚が上手に表現されているのだ。

年をとっても心は枯れない!

誰かを愛しいと思ったり、相手のことを大切にしたいと思う気持ちは年齢じゃないんだな…って思う。

『はつ恋』の主人公カップルは幼馴染として育ったけれど、それぞれ違う人生を歩み、年を重ねてから再会する。主人公カップルはずっと一緒に成長していたら恋人にならなかったんじゃないかな…って気がする。年を重ねたからこそ見えるものや、気づくことがあったらかこそ、行き着いた恋じゃなかったのかな…と。

そして私が好ましく思ったのはハナもトキヲも気持ちの良い人間だ…ってこと。

2人とも完璧な人間ではないし、間違うこともあるけれど「相手を大切にしたい」って気持ちをしっかり持っているところにグッときた。

中年を主人公にした恋愛小説でこんなに真面目で一生懸命な恋愛を書いた作品って、珍しいと思う。

村山由佳…やっぱり凄いわ。長きに渡って恋愛小説を書き続けてただけのことはある。

久しぶりに好みの恋愛小説に遭遇して満足させてもらった。改めてゆっくり再読したいと思う。

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