1972年に発行された『おおきなおおきなおいも』私と同じ年。30年以上、子ども達から愛されつづける名作絵本である。
ちなみに作者の赤羽末吉は教科書でお馴染みの『スーホの白い馬』の作者である。
- 赤羽 末吉(あかば すえきち、1910年5月3日 – 1990年6月8日)
- 舞台美術作家、絵本画家、絵本作家として活躍。
- 1980年に「国際アンデルセン賞・画家賞」を受賞。
- 『ももたろう』『スーホの白い馬』『おへそがえる・ごん』など絵本多数あり。
おおきなおおきなおいも
楽しみにしていたいもほり遠足の日、雨が降って延期になってしまいました。残念がる子どもたちは大きな紙においもを描きはじめます。
紙をつなげてつなげて、おいもの絵はどんどん大きくなります。
アマゾンより引用
感想
物語の筋書きは、いたってシンプル。
幼稚園児が芋掘り遠足へ行き、おおきなサツマ芋を掘り出して色々な遊びにつかって、最後は美味しく食べる……ってだけの物語で、教訓とか、道徳とか、そういったたぐいのものを啓発する作品ではない。
絵もメインになる「おいも」がサツマ芋色をしている以外は黒一色のペン描きで本を開くと「紙の白」「芋の紅」「人の黒・文字の黒」が目に映るばかりで、これ以上は無い……ってなくらいのシンプルさだ。
しかし……子供向けの本といって、あなどることなかれ。この面白さは並大抵ぢゃないんである。間の取り方の絶妙さといったら、もう……世代を超えて、なお通用する「笑いのセンス」が、そこにあるのだ。
ちなみに赤羽末吉は1910年の生まれなので、御年62歳の時の作品なのだが、文章のお茶目さ加減と、大胆な表現力は、いまでもじゅうぶん通用するかと思われる。
……とか、なんとか、私が屁理屈でもって説明しなくても「騙されたと思って」1度、手に取っていただけると面白さがお伝えできるのだが。
サツマ芋が好きでない人も「あぁ。なんかサツマ芋が食べたいかも」と、うっかり思ってしまうこと受け合いなんである。
現役の子供達の中にも「この本、大好き」ってな子がいるかと思う。ちなみに私は大人だけれども、今でも好きだ。
『おおきなおおきなおいも』を読むと、訳もなく「芋掘り」へ行きたくなってしまうくらいに。
古い作品のはずなのに、あまり古さを感じないのは私が古い人間だからか、それとも作品の鮮度が衰えていないからか……その辺のことは、現役の子ども達が1番よく知っているってなところだろう。
子供の頃から好きで、今でも好きで、これから先もずっと、ずっと好きであるだろう1冊。
この作品は、私にとって宝物のような1冊だ。