20代の頃、私は熱烈に姫野カオルコにハマっていた。
小説からエッセイから、手当たり次第に読み散らかしていた。
だからって網羅していた訳でなく、今回は未読のまま取り溢していたエッセイ本を手にとったのだが、その感想は「どうして私は、こんなにまで、この人の書いたエッセイにハマっていたのだろう?」のひと言に尽きる。
禁欲のススメ
ザックリとこんな内容
- 姫野カオルコの恋愛エッセイ。
- 恋愛エッセイと言うよりも、むしろ恋愛論と言うノリ。
- 自虐度が高く、読者を選ぶタイプの作品。
10年前の私にとって、姫野カオルコは自分の前を歩いてゆく先輩のよう存在だった。
知識レベル然り。人生においての経験値然り。
しかし自分が30代になってみると、姫野カオルコの書くエッセイは、至極当たり前の、なんてことのない話でしか無かったと言うことを知ってしまった。
時代の流れとか、時が経って古くなったとか、そういう問題は抜きにして。
今でも創作物としての小説は面白く読めるのたど、他のエッセイを読み返してみても、おおよそ同じ感想しか持てなかった。
ひとたび好きになった作品を嫌いになったりはしない。
ずっと好きだと思う。だが、はじめて読んだ時に受けた、トキメキはどこにも無い……てな感じ。長らくお世話になったけど、私はこの作家さんから卒業してゆくのだなぁ……と思った。
今までの『姫野節』とは一線を画す小説……たとえば『蕎麦屋の恋』の短編集で見せてくれたくクオリティを発展させてくれたなら、変わらずファンでいられりるかも知れないが。
本との出会いには時期があるということを改めて感じた1冊だった。
禁欲のススメ 姫野カオルコ 角川文庫