『ないたあかおに』はNHK教育番組の人形劇の題材などにもなっている、言わずと知れた名作童話である。
浜田広介と言うと、私の中では痛い系の童話を書く御三家という印象があるのだが、この作品は、彼の書いた痛い系童話の中でもピカイチではないかと思われる。
私は、いい年をして童話が大好きなのだが大人になって読む童話には「二度美味しい」魅力があって子供の頃に好きだと感じていた以上に、美味しい要素が山盛りだったりする。
この作品の場合だと、あかおにと、あおおにの友情物語がメインテーマであり幼い人が読むのであれば、それだけで充分楽しめるのだけれども「大人読み」をすると、さらに楽しめること受け合いである。
ないたあかおに
- 赤鬼は村人達と仲良くなりたくて、おいしいお茶とお菓子を用意して待つ。
- しかし、村人は、赤鬼の姿を見ただけで逃げ出してしまう。
- 青鬼の力で赤鬼にの家には村人達が遊びに来るようになるが…
感想
一般的に、この作品は2人の友情物語だと捉えられているが、ちよっと違う視点でもって読めば、2人の愛の物語とも思えるのだ。
あかおにの幸せを願って、自ら汚れ役を引き受けて身を引くあおおには友情に厚い男でもあるが自分本位の男だとも言えなくもない。
自己犠牲というシュチュエーションに酔いしれたあおおには自分が身を引けば、あかおには幸せになれると1人勝手に思い込み自分の判断だけで、突っ走っていってしまうのだ。
そして、おかおには、あおおにが去った後に涙する。なぜなら、あかおににとって、あおおには大切な存在だったのだ。
それゆえに、私はこの作品を「すれ違う愛(感情)の物語」だと思ってしまったのだ。
恋愛だけにとどまらず、様々な人間関係において、こういう類のすれ違いというのは、存外多いように思う。
創作物を読んでいて、なにが痛いか、切ないかというと、互いに思いあっているのに、これっぽっちも通じない……ってところだと私は思う。
この作品は、子供の頃も好きだったが、大人になった今では別の意味で好きだ。視点は変わってしまったけれど、私にとって特別な1冊であり、大切な1冊でもある。