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苦役列車 西村賢太 新潮社

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「凄い物、読んじゃった」のひと言に尽きる。

最近の芥川賞受賞作にはガッカリされられてばかりだったけれど、この作品は芥川賞を受賞するに相応しい。

色々と凄い…凄過ぎる。

やっぱり文学って面白い。その時代にあった「凄い人」がちゃんと世の中に出てくるのだから。

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苦役列車

劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。

将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は―。

現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。

後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。

アマゾンより引用

感想

作者の西村賢太は中卒の40代男性。作品は全て私小説。

西村賢太が幼い頃、父親が強盗強姦罪で逮捕された事により両親は離婚。母子家庭に育ち、中学卒業後は日雇い労働者として糊口を凌ぎつつ、小説を書いてきたとのこと。

西村賢太自身が藤澤清造の私小説を読んで救われたことから、私小説以外の物には興味が無いらしい。

『苦役列車』は作者が19歳の頃を描いた作品。

社会の底辺で暮らす若者の心情が心に突き刺さる。主人公は気の毒な境遇の人なのだけど「それはそれとして、人とし駄目だよね」って生き方をしている。

でも「駄目な人でも境遇さえ恵まれていればここまで、どん底に落ちないであろう」って現実にハッっとさせられた。「不幸の連鎖」って言葉があるけれど、本当に不幸と言うものは厄介で、一度その連鎖にハマり込んでしまうと、なかなか逃れることが出来ない。

私は主人公のような生活をした事がないので、彼の生活にリアリティがあるのか無いのかは分からないけれど、彼の憤怒や悲しみは理解出来る。

それにしても、ものすごく不幸な話なのに、死にたくなるほど欝な作品ではないところは凄いと思う。不幸な中にも「おかしさ」があるのだ。

主人公が若いという事も関係しているのかも知れない。今後、あの主人公(作者)が年齢を重ねていけば、物語はどんな風に変わっていくのだろう。

それにしても中卒でも、才能のある人(もちろん努力もしただろうけれど)なら、こんな小説が書けるのだなぁ。

西村賢太は何かを書くために生まれてきた人なのかも知れない。なんだか色々考えさせられた。

今年読んだ作品の中でもズバ抜けて興味深い作品だとは思うのだけど、好きか嫌いかを問われると微妙なところ。

正直なところ、読んでいて気分の良い作品ではない。

それでもこの西村賢太の事をもう少し知りたいと思うので、追々他の作品も読んでみたいと思う。

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