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水辺のブッダ ドリアン助川 小学館

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巷で評判が良さげだったので読んでみたのだけれど、私にはまったく理解出来なかったし、良さも分からなかった。

ドリアン助川の本はどちらかと言うと好きなのだけど、はじめて「う~ん」と頭を抱えてしまった。

今回はオチを含めたネタバレ前提の感想です。

しかも文句ばかりの感想になるのでネタバレNGの方や『水辺のブッダ』が好きな方、ドリアン助川が大好きな方はご遠慮ください。

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水辺のブッダ

ザックリとこんな内容
  • 主人公は多摩川の河川敷で、仲間のホームレスたちと共に生活する望太。
  • 望太は自殺しようと多摩川にやってくるが、ホームレスの仲間に救われ、やるせない思いを抱えながら生きている。
  • もう1人の主人公は女子高生の絵里。母と義理の父、血の繋がらない妹と暮らしていた。家族とは上手くいっていない状態。
  • 絵里はある事件をキッカケに、家族と離れて1人暮らしをはじめ、キャバ嬢として働くことになる。
  • 絵里の本当の父親は死んだと聞かされていたが、実は生きていた。父親が殺人を犯したことがキッカケで父と母は離婚。そして、絵里の実の父親は望太だった。

感想

サクサク読める読みやすい文体なので、物語の中盤までイッキ読みしたのだけれど、途中からよく分からなくなってしまったし、私には理解出来ない世界になってしまった。

主人公の望太は殺人を犯したことが原因で離婚。妻からは「娘とは会わないで欲しい」と言われていたため、服役後も娘(絵里)とは合わずにホームレスに転落した…と言う設定。

犯罪を犯してしまった事がキッカケで離婚したり、ホームレスになったり…ってのは、ありそうな話。主人公がどんな風に娘と関わっていくのかワクワクしながら読みすすめた。

一方、娘の絵里は典型的な転落人生。未成年でキャバ嬢に身を落とし、同棲している恋人はヤク中のDV男。なにげに桐野夏生が好きそうな設定。

そして忘れてはいけない重要人物。『水辺のブッダ』のタイトルになっている謎に包まれた「ブンさん」の存在。

ブンさんは「インドに行ったことがある」とされる人で、仏教的な考え(一般的な仏教とは少し違うイメージ)を持っていて、望太を導いていく。

「なるほど。ホームレス&キャバ嬢に堕ちた親子の再生の物語って訳だね」と思って読んでいたのだけど、予想外の展開と着地だった。

思想ばかりが先走っていて、ラストにまったく救いがない。

もうすぐ20歳になるところまで成長し絵里は妊娠する。当然だけど男は逃げてしまって1人ぼっち。紆余曲折あったけど「お腹の子を産もう」ってところに落ち着くのだけど、まともな大人の視点で読むと「あ~。これは不幸一直線ですよ。この子に子どもは育てられませんわ」みたいなオチ。

一方、絵里の父親の望太はホームレス生活の中でコツコツ貯めた60万円と言うお金だけ残して、親子の名乗りをしないまま死亡。

哲学的と言うか、思想的な救いを描きつつ、それが登場人物に生かされていない気がして、私には納得出来なかった。

高校中退で自己評価位の低い元キャバ嬢・無職の女がどうやって我が子を育てていくのか?

哲学や思想でお腹は一杯にならないし、子どもを育てることは出来ない。

私は純文学系の作品の場合、現実世界では役に立たない精神世界を描くのはアリだと思っている派だけど、『水辺のブッダ』はホームレスだの、キャバ嬢だの、妊娠だのと言った生臭いところに踏み込み過ぎた気がする。

60万円貯めて死んだ望太に言いたい。

「娘が困っているのが分かってるなら、親子の名乗りをして娘を助けてやれ。行政なり、NPO団体頼るなりして生活立て直して、娘の出産手伝え。自己陶酔してる場合じゃないんだぞ、このクズ!」

子どもを育てる基盤のないシングルマザーの場合、本気で行政の助けを求めたら母子支援施設に入所出来る。子どもを産んてもしばらくは衣食住の心配はいらない。行政の管轄下に入ればケースワーカーが自立プランも立ててくれる。

目先の60万ぽっちで何が出来ると言うのだ?そんなはした金残して父親として云々なんて、ちゃんちゃら可笑しい。

『水辺のブッダ』は男性視点で読めば感想が変わる気がする。

だけど女であり、母でもある私からすると「四の五の言ってないで、ちゃんと生きろ。話はそれからだ」みたいな気持ちにさせられたばかりで、まったく感動も共感も出来なかった。

巷で評価されている事が私には全く理解出来ない作品だった。

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