子供ってのは、どうして「悪いこと」「悪い人」「悪い子」が大好きなのだろう。
童話の中に登場する「どろぼう」は、格好イイものだと相場が決まっている。
凶悪強盗だったり、人殺しをしたりする場面が描かれていないから……ということも大きな原因だとは思うが、童話の世界には『嘘つきはどろぼうのはじまり』なんて言葉とはかけ離れた「どろぼう像」が完成されているからだろう、
すてきな三にんぐみ
おそろしい山賊さまが孤児救済にかけ廻るという意表をつくお話の中に、世のおえら方に対する皮肉をこめたあたり、いかにもアンゲラーらしい作品です。
GoogleBookより引用
感想
この作品のどろぼう達は、童話の世界にありがちな愉快などろぼうのイメージとは少し違うように思う。
のっけから凶器の紹介があったりして、いささか血生臭い雰囲気さえ感じられる。
彼らには「人殺しさえ厭わない」後ろ暗さがあるのだが、そんな彼らが、一転して改心するところが、この作品が童話に分類される所以と言ってもいいだろう。
この作品は「子供に読ませたい童話」だの「子供の好きな童話」だののリストには必ず上がってくる人気作品だが、私は子供の頃、この作品がそれほど好きではなかった。
嫌いでもなかったが「だから、なんだって言うんだ?」と思った覚えがある。しかし大人になって読むと、なかなか味わい深い。
1つの出会いがきっかけで、3人もの人間の人生が180度転換してしまうのだから。
この作品は「子供のための本」ではなくて「大人のための本」のような気がする。よく論じられることだが、大人が子供に読ませたい本と子供が好きな本には、かなり隔たりがある。
大人があまり「いい本だ。いい本だ」と言い続けると、うっかり子供もそんな気になってしまう……なんてことは多々ある。
この作品は、その典型ではないかと思う。良い作品だとは思うが、大人になって読んでみたらば、そんな風に思った。