千早茜は初挑戦の作家さん。図書館で表紙が気になったので借りてみた。
短篇集かと思っていたら、短篇を繋いで1つの話を作る連作短編集だった。
けだるい感じの作品が多くて、好きな人はたまらないだろうけれど、私はちょっと苦手な作風だった。
あとかた
実体がないような男との、演技めいた快楽。結婚を控え“変化”を恐れる私に、男が遺したもの(「ほむら」)。
傷だらけの女友達が僕の家に住みついた。僕は他の男とは違う。彼女とは絶対に体の関係は持たない(「うろこ」)。
死んだ男を近くに感じる。彼はどれほどの孤独に蝕まれていたのだろう。そして、わたしは(「ねいろ」)。
昏(くら)い影の欠片が温かな光を放つ、島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。
アマゾンより引用
感想
文章はそれなりにまとまっていると思う。
スッキリしていて読みやすい。そして描写も悪くない。「現代の若者を描く」と言う意味では上手いんじゃないかと思うのだけど、私はちょっと受け付けない感じ。と言うのも、不倫ネタが多かったのだ。アンチ不倫派としては厳し過ぎた。
そもそも恋愛小説は嫌いではないし「アンチ不倫」とは言うものの、全否定するつもりはない。
人間だもの、理性では抑えられない事だってあるだろう。
だけど、物語の中での恋は必死であって欲しいのだ。「なんとなく、やっちゃいました」テヘペロなノリは好きじゃない。
そこここにありそうな恋愛話という意味では、リアリティがあるのかも知れないけれど、薄汚いような気がしてならなかった。
何人か出てきた登場人物の誰にも心を寄り添わせる事が出来なかったのも敗因のひとつ。
でも、これはたぶん好みの問題だと思う。
自分にとって「物凄く苦手」な作品って、誰かにとって「物凄く好き」な作品だったりするものだ。
なので声高に「面白くなかった」とは言い辛いのだけど、私には全く無理だった。
「こういう生き方してる人も多いんだろうなぁ」と他人事のようにしか思えない作品だった。