数年ぶりに田口ランディの作品を読んでみた。
『コンセント』で衝撃を受け、数冊続けて読んだのだけど、盗作騒動以来ずっと手を出さずにいた。
盗作騒動自体は残念ながら、黒のようだし、個人的には1度盗作をした作家さんは信用できないと思っているのだけれど、今回は震災がテーマと言うことで好奇心の方が勝ってしまった。
サンカーラ この世の断片をたぐり寄せて
地震で揺れ続けるこの日本に生きているということ、原発のある国に暮らしているということ…ブッダの大きなこころを仰ぎ見つつ、無常の世をさまよいながら紡ぐ、日常のものがたり。
アマゾンより引用
感想
久しぶりに田口ランディの作品を読んでみての感想は「この人って、ちっとも変わってないなぁ」って事に尽きる。
デビュー作の『コンセント』からしてアッチ系(精神世界系)の人だなぁ…と思っていたのだけれど、この作品も明らかにその方面。
好き嫌いは分かれるだろうし、言っちゃあなんだが、このノリについて行ける人の方が少ないような気がする。でも、強烈なファンがつくだろう事も想像に難くない。読者を選ぶ作品だと思う。
小説ともエッセイともルポ本ともつかない作品で、敢えて言うなら物凄く文章の達者な人のブログを読んでいるノリと近い。
自分の書きたい事、考えた事を衝動的にぶぢまけたような文章で作品としては荒いけれど、グイグイと人を引き込む力はあると思う。個人的には「あんまり好きじゃない世界」だ。
20年前の私ならもう少し違った視点から読めたと思うのだけど、40歳所帯持ちとなったいま、このノリについていくのは相当キツイ。
ただ震災を考えると言う意味では手にとって良かったと思う。
テレビや新聞で報道されている事はどうしても偏りが生じる。またWebの世界で広がっている情報(個人のブログやTwitter)の場合は「物凄く熱心に活動している人達」の意見がメインで、独自の考えを持っていても内向きの人達の意見はなかなか表に出てこない。
そう言う意味では、いままで無かった視点から震災や、被災者の声が取り上げられていて非常に興味深かったし、私自身も深く考えさせられる部分が多かった。
誰かにオススメしたい作品ではないけれと、私は読んで良かったと思っている。良作とは言えないけれど興味深い作品だった。