巷で大絶賛(?)だったので手にとってみたのだけれど、翻訳物を読み慣れていない私には手強い作品だった。
ピュリツァー賞、全米批評家協会賞をダブル受賞したヒット作。英米で100万部売れたらしい。
オタク青年の悲恋とカリブ海の呪い……ってことで宣伝されていたのだけれど、個人的には宣伝方法に疑問を感じずにはいられなかった。
ここで言うオタクは一般的な日本人のイメージするオタクとは随分違うような気が。
オスカー・ワオの短く凄まじい人生
オスカーはファンタジー小説やロールプレイング・ゲームに夢中のオタク青年。心優しいロマンチストだが、女の子にはまったくモテない。
不甲斐ない息子の行く末を心配した母親は彼を祖国ドミニカへ送り込み、彼は自分の一族が「フク」と呼ばれるカリブの呪いに囚われていることを知る。
独裁者トルヒーヨの政権下で虐殺された祖父、禁じられた恋によって国を追われた母、母との確執から家をとびだした姉。それぞれにフクをめぐる物語があった―。
英語とスペイン語、マジックリアリズムとオタク文化が激突する、全く新しいアメリカ文学の声。
アマゾンより引用
感想
オタク青年ということだけど、日本人がイメージする「ヲタク」では無かった。私の目には熱狂的にSF本を好む偏執的な青年だった。
確かに、日本のアニメや漫画にも通じていたけれど、主人公オスカーは「ヲタク」ではなく「マニア」なのだと思う。
私は宣伝を素直に信じて手に取ったので「煽り文句と違うではないか」って時点で興覚め醒めだった。
翻訳物で読みにくい上に、途中で注釈が山ほど出てくるのも作品を読み辛くしている要因だと思う。
歴史的背景や、登場人物達が当たり前の事として知っている「お約束」を知った上で読めば、もっと面白かったのだと思うのだけど、基礎知識無しで挑むのは無謀だった。
この作品を絶賛している人達は、その辺のところをクリアしているのだろうか? だとしたら私は自分の無学さをもっと恥じなければならないだろう。
しかしながら、この作品が新しい文学を作り上げようとしているのは理解出来た。
物語のラストは切なくて好みだった。なんだか、ちょっとやり切れないところが良い。
主人公オスカーはもとより、それ以外の登場人物も魅力的で彼らの悩みは国を越えて共通のものだと思う。
それにしても久しぶりの翻訳物をこういう形で読んだのは残念だと言わざるを得ない。
今のご時世、本はなかなか売れないので「とりあえず売らなきゃ」的なノリで宣伝してしまうのは分からなくもないけれど、過剰な宣伝はかえって作品の足を引っ張ると思う。
ちなみに私はツイッターでこの作品の評判を仕入れた。
ツイッターがキッカケで出会った作品の中で「これは!」という物もあったので、ツイッターでの宣伝が悪いと言うつもりはないけれど、この作品に関しては、どうかと思った。
私には合わなかったけれど、翻訳物が得意な方なら楽しく読める作品だと思う。