一見さんお断りをかがける小料理屋の主、銀次の周辺で起こる食べ物にまつわる物語。
短篇集なのでサラッっと読めた。通勤電車で読むのにちょうどよい感じ。
狸汁 銀次と町子の人情艶話
麻布十番の料理屋「味六屋」は政財界の大物がお忍びで通う名店だ。
流れ板の銀次と女房の町子が切り盛りする小さい店に、馴染みの政治家から珍しい注文が入る。
接待の相手は右翼の重鎮で、オーダーされたのは戦時中に中国で食べた“狸汁”。銀次はその料理にこめられた男の思いを叶えることができるのか――(表題作)。
舌よりも心に残る料理の味わいを描く傑作短編集。
アマゾンより引用
感想
食べ物ネタ小説としては面白いと思う。薀蓄話も楽しいし、物語も人情味があって良い。
庶民的な話ではなくて、客層が金持ちなのは物語を盛り上げる意味でも、美食を追求すると言う意味でも必要だったのだろう。どの話も良く出来ていて面白かった。
しかし、作品としては私の好みではなかった。
話は面白いのだけど、主人公の銀次と町子の関係がどうにも。町子は粋な美人なのだけど、かなり淫乱。でも夫一筋でそういう意味では実に貞淑。
女性に言わせると「どこのオッサンドリームだよ!」と突っ込まずにはいられなかった。
これが小説ではなくて、ビッグコミックあたりで、ちょっと泥臭い絵柄の漫画家さんが漫画に描いてくれていたら「へぇ。なかなか、いいじゃないの」と読めたのだと思うのだけど、活字にされると恥ずかしくって読むに耐えない。
女性目線なので、そんな風に感じてしまうのかも知れないって事は承知している。50代くらいの男性が読めば、きっと違う印象になると思う。
私は「オッサンドリームもいいじゃない」と思えるほど人間が出来ていないらしい。
面白かったには間違いないけど、どうにも「コレジャナイ感」がたまらない1冊だった。
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