扇情的な人形が表紙だったので、人形をテーマにしたエロティックな小説かと思っていけれど、エロティックどころの騒ぎではなかった。
恐ろしく犯罪的な作品だった。
自分の中にある嗜虐心を駆り立てられる作品と言うか……もしかしたら私は、かなり変態と言うか、危ない人なんじゃないかと心配になるほどに。
人形(ギニョル)
- 第3回ホラーサスペンス大賞柵。
- 「ギニョル」と名乗る男娼の少年をめぐる物語。
- SM作家とSM写真がギニョルを監禁してな嗜虐と官能の日々を過ごすが…
感想
ひと言で説明するなら趣向を凝らしたSM小説ってことで良いと思う。
そのテのもののお約束とは言え、M役の子があまりにも超人的なのが吃驚なのだけれど。所詮は作り話ですから……ってところだろうか。
誰にでもタダで身体を開くというホームレスの男娼の少年をSM作家とSM写真家がマンションの一室に監禁して、SM行為に耽るという筋書きなのだけれど、Mの少年ってのが、ちょっと魅力的過ぎるのだ。
臀部に「自分は虐められる物だけど、ハマると引き返せなくなるから、1回だけでやめとけ」ってな意味の刺青が入っていちゃったりするのだ。
見た目はワンダフルで、責めにも強くつ、小悪魔的という、ある意味出来杉君なのだ。
この作品の面白さは主人公達が「こんな酷いことしちゃダメだ」と頭で分かっているのに、その世界にハマっていく恐怖だと思う。
読者をグイグイと引き込む筆力は素晴らしいと思うのに、ラストをどうして安直なものにしてしまったのだろうか。
ラスト手前でオチが読めてしまって、最後の最後で熱が冷めてしまったのは興醒めだった。
あれは読者を不愉快にさせすぎない配慮なのだろうか? などと思えてしまうくらいドキドキした作品だった。
SMが主軸になっているので、その系が嫌いな人は手をつけない方がいいと思う。
不愉快になって気分が悪くなること受けあい。「実は好きかも」って人は、コソッと読んでみるといいかも知れない。
私は面白かったと思う。エロスとホラーは仲良しだ……ってことをあらためて再認識した次第。次回作を期待したい。