禁断の恋……姉と弟の近親相姦がテーマの恋愛小説だった。
小池真理子の描く、精神的にちょっぴり倒錯した感じの恋愛小説は好きなので、楽しみにしていたのだけれど、かなり物足りない印象を受けた。
レモン・インセスト
生後間もなく誘拐され、行方不明になっていた弟が、見つかった。
24年ぶりに再会した弟は、亡き父の端整な面影を受け継いでいた。気ままに生きる美しい姉と、アルバイトで生活費を稼ぎながら大学に通う弟。
互いに恋に落ちてはいけないと理解しながら、二人は、なす術もなく惹(ひ)かれ合っていく……。
禁断の恋をテーマに、純粋な愛の行方を描く、美しい物語。もっとも純粋で、もっとも不安な愛。
アマゾンより引用
感想
「近親相姦」といっても、弟は赤ん坊の頃に誘拐されていたので2人が兄弟であるという意識は、とても低い。
「タブー感」も低いため身悶えするほどの切なさは感じられなかった。むしろ「不幸なめぐり合わせだったね」くらいの印象。
姉も弟も美しくて、お金の不自由もなく、贅沢な空間での恋愛シーンが描かれているのだけれど、どれもこれもが綺麗過ぎて、ハーレクインロマンス的な都合の良さを感じてしまって興醒めしてしまった。
いっそ、そこまでやるなら、もっとぶっ飛んだ設定にしてくれて、もっと酔わせて欲しかったな……と。
オチも、いまいち納得のいく流れではなく、読後感に切なさも愛しさも残らかった。面白くないフランス映画を観た後の倦怠感のようなものを感じたくらい。
重たいテーマを持ってきた割には、お手軽過ぎたのが敗因のような気がする。
上滑りではなく、もっとドッシリとした恋愛小説が読みたい。小池真理子の描く作品は、わりと好きなので、次の作品に期待したい。