あれあれ。なんだろう、この小物感とコレジャナイ感。
小池昌代、久しぶりの短篇集にワクワクしていたのだけど、今回はちょっとガッカリだった。
もしかしたら私の中で小池昌代に対する期待度が上がり過ぎているから、こんな風に思ってしまったのかも知れないけれど、どれもこれも「帯に短し襷に長し」な感じで、グッっと食い込んでくる物が無かった。
悪事
当たり屋の老人、甥に入れあげる解剖好きの女、怪しい楽器商、しゃべる疱疹に二股男。
夜の湖に女は何を沈めたのか…。
小さな悪事がもたらす運命の変調を鮮やかに描く連作短編集。
アマゾンより引用
感想
表題作が示している通り、人間の中にあるちょっとした「悪」がテーマになっている。「悪」と言っても、凶悪犯罪なんかではなく、誰もが隠し持っていそうなもの。
どの作品も上手いのだけど、キレが無いと言うかなんと言うか。
あえて気に入った作品を挙げるとすると表題作の『悪事』と『生魚』の2作品。
『悪事』は当たり屋の老人と弁当屋の女が登場するのだけれど、なんだか微妙に嫌な感じの仕上がりが上手いと思った。
『生魚』はもっと嫌な感じ。甥っ子に執着する独身女性が主人公なのだけど、独身女性に対する悪意が滲み出ていて、これもまた嫌な感じ。
嫌な感じが上手い……とは言うものの「ぶっちぎりで嫌な感じ」でないのが残念なのだ。
どの作品も靴の上から足を掻くような物足りないがあって、どうにも満足出来ない感じ。「通好み」と言えばそうなのかも知れないけれど。
ここ数年、小池昌代をずっと追っているけれど、今回の作品は「今までになかった雰囲気」ではあった。
もしかしたら実験的な作品なのだろうか?次の作品に期待したいと思う。
悪事 小池昌代 扶桑社