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デンジャラス 桐野夏生 中央公論新社

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『デンジャラス』、かなり面白かった!

谷崎潤一郎と桐野夏生が好きな人には是非とも読んで欲しい作品。

『細雪』の次女雪子のモデルだったと言われている、重子が語り部になっていて、作家谷崎潤一郎のハーレムめいた生活が描かれている。

「実際に見てきたように書く」桐野夏生の特性が余すところなく発揮された作品で、あくまでも桐野夏生の作った世界に過ぎないと分かっているのに、うっかり「谷崎潤一郎ってこんな人だったんだ…」と錯覚してしまうほど、真に迫った作品だった。

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デンジャラス

文豪が築き上げた理想の〈家族帝国〉と、そこで繰り広げられる妖しい四角関係――

日本文学史上もっとも貪欲で危険な文豪・谷崎潤一郎。

人間の深淵を見つめ続ける桐野夏生が、燃えさかる作家の「業」に焦点をあて、新たな小説へと昇華させる。

アマゾンより引用

感想

この作品は読む前から『細雪』の姉妹がテーマの作品だと知っていたので『デンジャラス』だなんて、谷崎潤一郎ワールドには似つかわしいくない無粋な題名だな」と思っていたけれど、実際に読んでみるとこれ以上なくしっくりくる題名だと思った。

私達が生きている時代とは違う価値観を持った時代を生きた人達の話なのに、現代の人に通じるところが多いし、最初から最後まで毒々しくて『デンジャラス』としか言いようのない作品に仕上がっている。

私は谷崎潤一郎の作品が大好きだけど、谷崎潤一郎を研究している訳ではないので「事実」については、正直どうだって良いと思っている派。

しかしディープに谷崎潤一郎が好きな人がこの作品を読んだら読んだら「コレジャナイ」って思うかも知れない。

「これは桐野夏生が作った谷崎潤一郎ワールドである」と言う前提で読まないと楽しめないと思う。

作家、谷崎潤一郎の独善的な部分と谷崎潤一郎に愛されたい女達の怨念が実に見事に描かれていた。

1人の男の愛を数人の女が奪い合い共有し合う世界って私には理解出来ないけれど、その倒錯した世界は嫌いじゃない。

意外かも知れないけれど、この作品の中で性的な部分は直接描かれてはいない。

むしろ真面目と言うか昔風の感覚で直接的な部分は伏せられているにも関わらず、そこはかとなくエッチな雰囲気が漂ってて生臭く感じられるところが桐野夏生の上手さなのかな…と感心した。

今さら言う事でもないけれど、桐野夏生は女を描くのがやたら上手い。女同士のドロンドロンした感情のやりとりが読みたい人には猛烈にオススメしたい。

暑さに負けてガッツリした小説を読むのが億劫になっていた時期だったのに、あまりの面白さに一気読みしてしまった。夏バテが吹っ飛ぶような、力のある作品だった。

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