私。何だかんだ言って宮本輝が好きだったみたい。全作品を愛している訳ではないけれど「宮本輝が書いた小説」ってだけで、どこか期待してしまうところがあった。
宮本輝は2026年現在79歳。『灯台からの響き』は2020年に刊行されているので73歳の時の作品だと思われるのだけど「作家にも旬がある」ってことを改めて思い知らされた。「作家の旬」はどの作家さんにもあるけれど、大御所と呼ばれる人にもあるのだなぁ。
極稀に90歳を越えても衰え知らずのモンスターのような人もいるけれど、一般的にはそうじゃない。申し訳ないけれど「おじいちゃんの書いた小説」だと思ったし、そこはかとなく漂う加齢臭のようなものを感じた。
灯台からの響き
- 板橋の商店街で父の代から続く中華そば店を営む牧野康平は妻を急病で失って以来、店を休業し、ひきこもるような生活を送っている。
- ある日、康平は蔵書の間から妻宛ての古いはがきを見つける。三十年前の日付が記されたそのはがきには、海辺の地図らしい線画と数行の文章が添えられていた。
- 差出人が大学生の小坂真砂雄であることや、妻がかつて「見知らぬ人から届いた」と話していたことを思い出した康平は、はがきの意味を知ろうとする。
- なぜ妻はそのはがきを大切に残し、自分の本に挟んでいたのか。妻の知られざる過去を探すため、康平は初めて一人で各地の灯台を巡る旅へと出発する。
感想
私がこの作品から「加齢臭のようなものを感じた」と言うのは主人公が老人だから……と言う訳ではない。登場人物達を囲む世界の描写があまりにも昭和過ぎてリアルを感じることができなかったのだ。
物語の時代背景が昭和だったら気にならなかったのかも知れないけれど、主人公の牧野康平は現代……インターネットもスマホもある時代に生きている。しかも62歳って設定なので、そこまで「おじいちゃん」ではないはず。
牧野康平は中華そば屋の店主として生きてきたので世の中の考え方や常識と外れているのは良いのだけど、牧野康平の子ども世代の描き方が昭和のままで「えっと…これって昭和の話でしたっけ?」と混乱してしまった。いっそ若い世代を出さなければ良かったのになぁ。
物語の本筋である「亡き妻の蘭子の謎」については「イイハナシダナー」ではあるものの、これについても設定がズブズブで「いやいや。高校生でそこまで達観した人はいないって?」みたいなことをしていたり、金銭感覚も謎過ぎだったりする。
宮本輝……大作家になってしまったから世の中の「普通」の感覚が分からなくなっちゃったんだろうか? それとも老人になってしまったゆえに一般常識から乖離してしまったのだろうか?
河野多惠子が『半所有者』を書いて川端康成文学賞を受賞したのは75歳の時だったことを思えば年齢で作家を判断するのは間違っていると思うのだけど『灯台からの響き』からは「宮本輝は老いた……」と言う感想しか出てこなかった。残念だけど、これもまた読書。

